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順子ママが振り返る。
「クラブのホステスは、必ずしも社会的に評価される仕事ではありません。華やかなように見えて、その底流にはある種の悲しみが流れているのです。私と洋子ママの絆は、その女の悲哀のなかに築かれたものでした。作詞家、小説家として幾多の作品を世に残した洋子ママですが、その意味では私を含め『姫』から巣立っていったホステスたちもまた、洋子ママの作品であったと思います」
「私にとって、クラブママという仕事は天職だった」
五木ひろしの『よこはま・たそがれ』や中条きよしの『うそ』など、多くのヒット曲の作詞も手がけた山口洋子は2014年、パートナーで「キックボクシングの生みの親」である野口修氏に見守られ、静かに息を引き取った(享年77)。コロナ禍の2020年にクラブ「順子」を閉じた順子ママはいま、こう語る。
「私にとって、クラブママという仕事は自分の天職であったと思っています。ただ、その天職とは、数あるたくさんの仕事のなかから、結果的に自分がいちばんやりたかった仕事を選ぶことができて、幸運だったという意味ではないのです。
マルチな才能を持ち合わせていた洋子ママと違い、私にできるのはこの仕事しかなかった。それを理解してくれて、この世界に導き生かしてくれたのが洋子ママでした。
私にはこれしかなかった――そのたった1つだけの仕事と引き合わせてくれたことに、私はいまも深く感謝しているのです」
夜の銀座で輝いた2人の女性の物語である。