『ものがわかるということ』(養老孟司 著)祥伝社

 著者は『バカの壁』をはじめ数々のベストセラーで知られている。近年は「死」や「老い」についての著作が多くなっていたが、今作で扱っているのは、〈わかるとはどういうことか〉という根源的な問いだ。

「若い世代に向けた養老先生の本を作りたいと考え、先生のご著書を読み、打ち合わせをする中で、先生は『わかるということ』をずっと追究しているのでは、と思ったのが企画の出発点でした」(担当編集者の沼口裕美さん)

 章立ては〈ものがわかるということ〉〈「自分がわかる」のウソ〉〈世間や他人とどうつき合うか〉〈常識やデータを疑ってみる〉〈自然の中で育つ、自然と共鳴する〉の5つ。全体がひとつの大きな問いで貫かれている一方で、著者がこれまで思考してきたテーマの総まとめのような一面もある。少しでもわかりやすくするために著者の主張を要約したり図解を掲載しているビジネス書などは多いが、本書はその逆だ。本を読む過程を楽しみながら「わかるということ」がどのようなことなのか、深く考えられるようになっている。

ADVERTISEMENT

「想定していた若い世代の他、子育て中の30代、40代の方からも感想が届きます。子育てはどうなるかわからない不合理なもの。子供は自然と同じという本書の言葉で、気持ちが楽になったという感想もいただいています」(沼口さん)

2023年2月発売。初版1万部。現在8刷7万部(電子含む)