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――永田さんが救われた出来事や社会的なシステムはなんですか。

永田 今も私は依存症家族の自助グループに参加しています。「回復」という作業はなかなか一人ではできないことで、自分の中にあるどす黒い、決して温かいとは言えない感情をその中で素直に出せて、それを誰からも否定されない場所が大事だと思います。

 本の中でも、自助グループに参加していた高齢の男性が、「あんた、ほんまにしんどいなあ」と涙しながら言葉をかけてくれたときのことを書きましたが、自分の辛さに耳を傾けて一緒に泣いてくれる人がいる。そういうことのひとつひとつが支えになりました。

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過食嘔吐が止まった

――パートナーの方は、アルコール依存症がもとで46歳の時に認知症になり、その後断酒したそうですね。現在は摂食障害の治療を継続されているのでしょうか。

永田 実は、一昨年の夏あたりから過食嘔吐のほうも自然に止まったんです。はっきり言って、摂食障害とはこれからもずっと付き合い続けるんだろうと思っていたのでびっくりしています。

ふだんの夕食の様子。妻の過食嘔吐は一昨年止まったという(本人提供)

 今は一緒に朝夕、食卓を囲んでいて、それがだんだん当たり前のようになってきていて。20年以上、当たり前じゃなかったんですけどね。

――現在、パートナーの方はどう過ごされているのですか。

永田 最近の妻のお気に入りは大食い動画ですね。ロシアン佐藤とはらぺこツインズが好きだったんですけど、はらぺこツインズが途中から酒を飲むシーンが増えてきて。

――それはドキッとしますね。

永田 そうなんです。でも、それから本人も自然とはらぺこツインズは見なくなって、今はロシアン佐藤一本になりました。

 この本も、何回も妻は読み返しているんです。ただ全然実感が無いみたいで、「へぇ、私こんなことしてたんだ~」という感じです。

 それが認知症のせいなのか、解離性障害のせいなのかわかりませんけども、私としては20年間の実感がなくても別にいいや、と思っています。今さらあんなにつらいことを覚えていても仕方ないと思うし、今が笑顔だからいいや、というところですね。