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八木 うちは「お前はヒップホップキャラで行け」みたいなやり方は、まったくしないですね。どちらかというと、素材そのものの良さを見てもらうようにしています。マネージャーが芸人を売るために“パッケージング”することも大事な作業ですけど、それは本人たちにとって良いものにならない可能性もありますから。もちろん、絶対にタイタンのやり方が正しいというわけではないですけどね。

『M-1グランプリ 2022』で優勝を飾ったウエストランドの井口浩之氏 ©文藝春秋/斉藤美和

「どうしても馬が合わない芸人はいますよ」

——芸人さんと接する中で、どうしても合わない相手はいますか? 売らなきゃいけないのは分かるけど、なんだか好きになれない、みたいな。

八木 もちろんあります。どうしても馬が合わない芸人はいますよ。でも、だからといって意図的に「こいつを売れさせないようにしよう」みたいなことはないです。人間としてはダメなところが芸の世界では、魅力につながったりもしますしね。

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——ちなみに、「売れる」ってけっこう曖昧な言葉ですよね。八木さんは、どんなとき芸人が売れたと思いますか?

八木 バイトをせず、芸人の仕事だけで生きていけるようになったらですね。

——「ウエストランド」さんのように賞レースがきっかけで世に出る芸人もいれば、「春とヒコーキ」さんのようにYouTubeでバズって世に出る方もいますよね。以前に比べて、売れ方が多様化してきている時代と言えるかと思いますが、YouTubeで稼げるようになった芸人さんも「売れた」と言って良いと思いますか?

八木 そうですね……。実は先日、春とヒコーキの二人と一緒に飲んだんですよ。そのとき、ちょうどそんな話題になりました。ユーチューバーとしては順風満帆。でも本当はどうしたいのかを突き詰めると、「やっぱりネタをやりたい、ネタで売れたい」と言うんです。「本人たちの本当の夢はそっちにあるんだ」と知れたので、マネージャーとしては「ネタでひと花咲かせられるようにしなきゃな」と感じました。

「春とヒコーキ」のYouTubeチャンネルには再生回数が380万回を超える動画も

——YouTubeで稼げているんだから良いでしょ、で終わらせるのではなく。

八木 僕の中では芸人とはネタをやる人のことだと思っているので、本人たちがそこに重きを置きたいのであれば、それはもちろんネタで輝いてもらえるように支えていきたいですね。

——タイタンは爆笑問題さんが今でも新ネタを作り続けていますよね。その姿勢も、若手芸人に影響を与えていそうです。

八木 そうですね。「爆笑さんがネタをやり続けているのに、自分たちがやめるわけにはいかない」とよく若手も言っていますよ。

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