「仏の教えに反することをしてしまい…」
「事件の涙」でウィシュマさんの日記を読んだ妹たちは、ウィシュマさんが同棲相手のスリランカ人男性からDVの被害にあっていたと知る。
その日記が冒頭の文章だ。男性が殴った理由は、ウィシュマさんが十分にお金を工面できなかったことだと窺える。日記には「彼氏に家賃と食べ物のお金半分あげる、できなかったから」と書かれていた。
妹たちはウィシュマさんと同時期に入管に収容されていた女性に面会して、姉が男性と同棲した経緯を知る。亡き父に外見が似ていたことで好きになったという。ところが、彼の子どもを妊娠すると「堕ろしてくれ」と求めるような、内面は父とは違うタイプの人間だった。妊娠中絶が、ウィシュマさんの心に自責の念を強めていく。
(2020年10月3日のウィシュマさんの日記)
「仏の教えに反することをしてしまい、その結果が自分に返ってきているのだと分かるようになった。自分のしてきたことを反省したい」
(2020年10月5日のウィシュマさんの日記)
「お母さんからもらった母乳に値する恩返しがしたい」
家族への連絡を閉ざした背景に「仏の道に反した」という贖罪の念が強かったことが想像できる。妹のワヨミさんは姉の心の内を思いやった。
(妹・ワヨミさん)
「姉は後ろめたくて恥ずかしくて、連絡を絶ったのではないかと思います」
当初は強制送還を受け入れ。その後、撤回した背景
入管に収容された当初、ウィシュマさんは強制送還での帰国を希望した。しかし、それを思いとどまらせる出来事が起きる。同棲していた男性から手紙が届いたのだ。
(男性からの手紙)
ANATA SAGASUTE BATSU YARU
((帰国したら)あなた 探して 罰やる)
帰国したら探し出して「罰を与える」と書かれた手紙。スリランカで男性の家族が待ち構えて探し出すとも書かれていた。ウィシュマさんも強い衝撃を受けた。
(10月14日のウィシュマさんの日記)
「このことを誰にも話したくない。手紙も書きたくない」
当初スリランカへの送還を望んでいたウィシュマさんは翻意する。
「入管に光を」では、名古屋入管に収容されていたウィシュマさんに面会した支援者の松井保憲さんが語っている。
(松井保憲さん)
「暴力をふるっていた男性の方から手紙が来たということで、そこに脅迫状めいた内容ですね、書かれていて帰れない。スリランカに帰ったら身の危険、命の危険があるという話があって」
ウィシュマさんが警察でDVについて話したことで男は強い怒りを示したという。このことを聞いた支援者の松井さんは助言した。
(松井保憲さん)
「日本に残ることができるようにね、仮放免の手続きとか必要だったら支援しますよという話をしましたね」