(眞野明美さん)
「私が使っていた部屋だったけれど、ウィシュマはここを……。ここならウィシュマの様子をみることができる。私はウィシュマが入管の中で苦しいことをいっぱい思い出してほしくなかった」
眞野さんは絵が好きなウィシュマさんのために画材を送るなどして励ましてきた。入管に収容中のウィシュマさんから手紙が届くようになった。花の絵が描かれた手紙を妹たちに見せた。
「あれ、この花、ウィシュマがよく描いていた花だ」
妹たちがスリランカ語で花の名前をつぶやくと眞野さんは語る。
「有名? 好きなんだ。彼女はいっぱい花を散らしているの」
花の絵でウィシュマさんの心が弾んだように解放されている。
(2020年12月31日の手紙)
「あなたがいるから いま 全部問題忘れて 自由に絵を描きました」
「今までと違って 良い方向に考えられるようになりました」
心の内を明かせる人と出会えた姉。日々体調が悪化する中で綴っていたのは希望の言葉だった。「Dear Mano San」で始まる手紙は、日本でたどり着いたウィシュマさんの“人間観”が示されている。
(亡くなる2か月前に書いた手紙)
2021.1.10
「Dear Mano San,
私たちは人生の中でいろんな人に出会う 話す 遊ぶ 問題も起きる
前にやった間違えたことを直して悪いことを直して もう一度…
人間に生まれてきて良かったですningen ni umarete kite yokatta desu
許すことも助けることもできるforgiveness,help mo dekiru.
「Dear にっぽん」は、眞野さんが主人公のドキュメンタリーだ。
一人の日本人女性が行き場を失った外国人を受け入れて共に暮らしている、と眞野さんを紹介するナレーションが入る。眞野さんが仮放免の外国人たちを受け入れるきっかけになった女性、スリランカ人のウィシュマさん。彼女の支援者から相談されて受け入れる部屋を用意していた眞野さん。亡くなる3日前に最後に面会した印象を語る。
(眞野明美さん)
「車イスに乗ってやっと生きてる状態だった。面会中も何回も『うっ』ってなるから。実際に戻したから。本当に苦しかったです。彼女を見るのは。目の前のウィシュマを連れ出すこともできないわけだから」
ウィシュマさんからの手紙を眞野さんが取り出す場面から、今も彼女を大切に思う気持ちが伝わってくる。
(眞野明美さん)
「これだけの手紙……、(ウィシュマさんには)伝えたかったことがあるんですよね」
手紙には心臓に持病がある眞野さんをいたわる言葉も綴られ、人間同士の思いを垣間見ることができる。