こうした観点から、各番組でのキャスターら出演者のスタジオでのコメントを見てみよう。
NHK「ニュースウオッチ9」
(田中正良キャスター)
「被害を訴える声は相次いでいました。こうした声にしっかり向き合っていく必要があります」
こういうコメントでは、それぞれのキャスターやコメンテーターの“問題意識”や“力量”が明らかになってしまう。「しっかり向き合って」という田中正良キャスターの言葉はこういう時の常套句ではあるが、独自に何かを指摘するわけでもない。深く考えた末の言葉とはおよそ思えない。常識を述べただけの空疎な言葉だった。
むしろ、メディアで伝えてきた自分たちの責任を正直に認めた、元NHKの武田真一アナウンサーの言葉が光っていた。
日テレ「DayDay.」
(武田真一MC)
「私も報道の現場に長くいましたけれども、この間、こうしたことというのは芸能界の中での出来事で、ニュースとして伝えるべきことなのかどうかということを突き詰めて議論したり、考えたりすることをしてきませんでした。
(ジャニーズの現社長である)藤島氏が自らも積極的に知ろうとしたり追及しなかったことについて責任があると考えているとしていますけれども、同じ責任を、伝える側としても(自分自身も)今、感じています」
「ファンや私たちが迷いなく夢を見続けられるようにしてほしい」
元NHKアナで高い見識を示した武田真一キャスター。同じように元NHKアナで同じように日本テレビの看板番組の「顔」を務めている有働由美子キャスターはどう語ったのか。
日テレ「news zero」
(有働由美子キャスター)
「この件については番組で話し合って、私が話します。
まず性被害については被害者のケアを最優先で考えてほしい。
そしてエンタメを通じてたくさんの夢を見せてくれたジャニーズだからこそ、ファンや私たちが迷いなく夢を見続けられるようにしてほしいし、そのためには今回の説明にとどまらず、プライバシーを十分守った上でですが、情報をオープンにする社会的責任を果たしていくべきだと思います。
そして私たち『news zero』も、性被害は絶対に許さないという姿勢でしっかりと向き合って行きたいと思います」
有働キャスターの言葉は決意に満ちた表情でしっかり語っていたものの、残念ながら“深み”を感じさせない。「プライバシーを守る」ことと「情報をオープンに」という「常識的な言葉」を口にしただけだ。
この点では、武田真一キャスターが示したようにはジャーナリストとしての“見識”を示すことはできなかった。同様に誰でも言えるような「常識的な言葉」を口にしたのが、テレ朝「羽鳥慎一モーニングショー」の玉川徹コメンテーターだった。
テレ朝「羽鳥慎一モーニングショー」
(玉川徹コメンテーター)
「藤島社長がこういうふうにコメントして謝罪をしたのはとっても大きなこと。大きなステップを踏み出した。
やっぱり今後、社長が今回コメントしたことをきっちり進めていけるのか。自ら検証して進めていけるのか。その際に被害を訴えている方を第一に考えて進めていけるかどうかがポイントだし、ジャニーズの未来をそこが決めると思う」