世の中にはいろいろな町があるものだ。あらゆる産業が集約されて巨大な人口を抱える大都市があるかと思えば、ろくに名物もなく、廃れる一方の地方都市もある。日本はもはや人口減少社会だから、地方都市のほとんどはいかに廃れるペースを抑えるかにやっきになっている。そのために取り組んでいるのが、「町おこし」だ。
日本全国あちこちの町は、それぞれなかなかに個性的な町おこしをやっている。バブル景気のただ中に全国の市町村に1億円をばらまいたふるさと創生事業では、あちこちにやたらと華美なモニュメントが生まれたが、是非はともかくそれもまた町おこしのひとついえばそうだろう。
そして今回やってきた羽咋駅。なんとこの駅のある羽咋という町は、「UFOの町」なのだという。
“ナゾのUFOの町”「羽咋」には何がある?
UFO——すなわち未確認飛行物体。必ずしも宇宙の向こうからやってきた類いのアレだけを意味しているわけではないようだが、まあだいたいの人はその意味でこの言葉を使う。
UFOなどというものは、遊びのつもりで触れている分にはいいのだが、本気になってしまうといろいろとややこしい。言葉を選ばずにいえば、オカルトの世界のお話だ。それと分かって楽しめばいいけれど、ムキになってもろくなことがない。
ところが、そんなUFOを町おこしに使っているのが羽咋という町なのだという。実際に、列車からホームに降りると、改札の脇に何やら突飛なご当地キャラの看板が立っていて、「UFOのまちへようこそ」みたいな言葉が添えられている。宇宙人サンダーくんというらしい。
普通のジャケットを着た男性がグレイ型の宇宙人のお面をかぶって……などというと身も蓋もないが、まあそういうものだ。ほかにも駅のホームの柱には地元の学生が描いたというUFOの壁画もあった。
いずれにしても、これはUFOマニアの間でひっそり知られている目撃情報多発地帯、などというレベルではない。町ぐるみ、駅ぐるみでもはやUFOを推しているということだ。これはいったいどういうことなのか。羽咋駅にやってきたのも、そうした疑問というか、興味を持ったからである。
そもそも「羽咋」はなんて読む?どこにある?
と、このあたりで羽咋という駅がどこにあるのかを説明しておく必要があるだろう。そもそも読み方からしてわかりにくいが、「はくい」と読む。
石川県は能登半島の付け根、いわゆる“口能登”と呼ばれる地域に位置している人口約2万人の町だ。北陸新幹線が通っている金沢駅からは、JRいしかわ鉄道線からJR七尾線に乗り継いで約1時間。つまり東京からだと3時間半ほどでたどり着くことのできる、能登半島の小さな町である。この小さな町が、UFOの町だ。