歩くにはだいぶ距離があるが、海まで行けばのと里山海道というハイウェイが通り、千里浜の海岸沿いは砂浜に直接クルマで乗り入れることができる千里浜なぎさドライブウェイが観光名所になっているとか。全長約8kmにわたる、遠浅の砂浜だ。
かくのごとく、能登の中心地としての長い歴史といくつかの観光名所も持つ羽咋の町。人口2万人ちょっとということもあって規模は小さく、市街地と呼べるものは駅の西側の一角に限られる。駅の東側は、どうやらもともとは田園地帯だったようだが、いまは一部に区画整理された住宅地があった。例のコスモアイル羽咋もこの一角だ。
松本清張の雰囲気が残る?廃線跡の現在の姿
そして、七尾線の線路に沿って、自転車道が北に向かって延びている。サイクリストのための道……というのは、だいたい廃線跡と相場が決まっている。実際にこの羽咋駅からの自転車道も、北陸鉄道能登線という私鉄の廃線跡である。羽咋駅のすぐ北で七尾線と交差して、西側の日本海沿いを走ったローカル線だ。
松本清張『ゼロの焦点』では、主人公の鵜原禎子が失踪した夫を追ってここを旅している。クライマックスの舞台になったヤセの断崖は、北陸鉄道能登線の終点、三明駅からさらに遠く北に行った先。
北陸鉄道能登線は1972年に廃止され、その後に廃線跡が自転車道に整備された。ここを自転車で走れば、松本清張の世界の中にちょっとだけ浸れる……かもしれない。
と、まあこのように、羽咋の町は小さいけれどUFOだけの町では決してない。もちろんUFOもおもしろいが、それ以外にも歩いてみればおもしろい。茶色く汚れたアスファルトの道の脇には北陸の町らしさを感じさせる板張りの木造家屋が建ち並び、昭和、もしくはそれ以前からあったかもしれない古い商店がところどころにあって、時の流れはゆったりと。
駅に戻ると、バイクで駆けてきた数人のグループが、駅前の飲食店に入っていった。カレーが食べ放題だとかなんだとか言っていた。もしかすると、そういう知る人ぞ知る名物も、この町にはあるのかもしれない。