コスモアイル羽咋は1996年の開館。駅の東側に見えるドーム型の建物がそれだ。宇宙についてはまったく知識を持ち合わせていないので詳しいことはわからないが、なんでもなかなか貴重で本格的な展示が並んでいるのだとか。UFOによる町おこしというと、いささかトンデモな印象を抱いてしまう。しかし、思った以上に地に足の着いた町おこしといっていい。
“UFOの町”にはUFO以外に何がある?
そういうわけで、ひとつの答えが出てしまったわけだが、能登半島の町までわざわざやってきた。羽咋駅の周りを、もう少し歩いてみたい。そもそも、羽咋という町がUFOだけの町などということもあるまい。
羽咋駅前後のJR七尾線は、能登半島西部を南北に通る。つまり、駅の西にしばらくいけば日本海に出るということだ。地図を見ても、羽咋の町の市街地は駅の西側に広がっている。
そちらに向かって歩くと、小さな小川を渡った先に見えてきたのが羽咋神社だ。町の名前を冠する神社は、地域の歴史そのものだ。第11代垂仁天皇の第10皇子・磐衝別命が祀られているのだとか。
といっても、磐衝別命が実在していたかどうかはわからない。大事なのは、それほど古い時代からこの地域は栄えていたということだ。駅からはだいぶ離れているが、能登一国宮でもある気多大社は、奈良時代に大伴家持が参詣したこともある古社である。
羽咋神社の前を東西に走る道筋は、パセオ通りというらしい。いわゆる商店街で、羽咋の町の中心筋のひとつといっていい。あいにくこのご時世、商店街には活気があるとは言えないが、この道を海に向かって下っていけば理美容店やら喫茶店、飲食店、酒屋、銀行などを見る。そのまま下ると国道249号にぶつかり、さらに西に越えていけば海へと向かってゆく。
町を歩いていると気がつくのが…
羽咋の町を歩いていて、何より目に付くのが木造の家屋と茶色くなったアスファルト。木造の家屋は、壁の板が縦ではなく横に張られている。
下見板張りという工法で、雨風に強い。冬になると日本海からの風雪に晒される能登半島や北陸では古くから取り入れられている建築様式のひとつだ。茶色くすすけたアスファルトは、雪国がゆえに融雪剤で酸化しているからなのだろうか。
パセオ通りや国道249号、市役所前の道などいくつか大きな通りはあるが、ほかはほとんど入り組んだ路地が張り巡らされた羽咋駅前の町。取り立てて区画整理をした痕跡もないあたりに、この町の歴史の深さを感じ取れる。