「整備の仕事って、乗っている人の顔だったり気持ちを知ることはないんですよね」
「いまの新幹線保線区に来る前、去年までは七尾鉄道部工務課というところに所属していたんです。そこは、『花嫁のれん』が走る七尾線を、まさに整備するところ。
ただ、実際の整備の仕事って、夜間だったり昼間の列車の合間だったりで、乗っている人の顔だったり気持ちを知ることはないんですよね。
だから、もしもそれを知ることができたら、整備する側としてもちょっと違うやりがいに繋がってくるのではないかと思ったのが、アテンダントに応募したきっかけでした」(吉川さん)
「私は石川県の出身ではなくて、福井県の出身なんです。いまは金沢に住んでいるんですけど、ちょっと前までは福井から通っていて。
で、金沢で仕事をしているうちに、もっと石川県のことを知りたいと思うようになったんです。それで、応募してみようと。ただ、1期生の募集のときには選考で落ちてしまったんですよね。それでも諦めきれなくて、2期生の募集にも応募して、去年の5月からアテンダントとして乗務するようになりました」(山口さん)
日常の仕事にプラスアルファでアテンダントも…。正直、大変では…?
ふたりとも、アテンダント歴はおおよそ1年。ふだんはそれぞれの職場で日常の業務に励み、月に数日は「花嫁のれん」のアテンダントとして乗務している。いわば“二足のわらじ”というわけだ。が、それってなかなか大変なのではないだろうか。なにしろ、保線も駅も、昼夜を分かたずに働く仕事なのだ。
「そうですね……ふたつ仕事をやっているようなものですから、正直大変です(笑)。普段の業務ではお客さまと接することはもちろん、きっぷの拝見などもすることはないので。それに、もちろんいまでも夜中の仕事はありますからね。
ただ、お客さまと接する仕事を経験したことで、普段の業務でのコミュニケーションの取り方などにも生きているのかなとは感じます」(吉川さん)
「最初の頃は、乗務していて酔ってしまうこともありました。進行方向の反対に向かって歩きながらというのは、結構苦労するんです。で、覚えないといけないことをメモしたりするじゃないですか。そういうのも酔っちゃうんですよね。ふらついたりして……。最近はさすがに慣れてきましたが、乗務する日は1日に2往復4列車なので、足はやっぱり疲れます」(山口さん)
あらかじめ“揺れる場所”を知っているので…
などといいながらも、ふたりとも口を揃えるのが、「気持ちが軽くなる」ということ。観光列車に乗ってくるお客たちは、みなその列車を楽しもうという前向きな気持ちでやってくる。車内でのアテンダントとの交流もまた、楽しみのひとつだ。そうした前向きな交流をする中で、自然とアテンダントの吉川さんや山口さんの気持ちも晴れやかになってくる。
「もちろん、普段の仕事がつまらないわけじゃないですよ(笑)。でも、お客さまが喜んでくれている列車でアテンダントをして、それでまた夜にはその線路を整備している、みたいなのってやりがいがあるじゃないですか。お客さまとも線路を保守しているという話をするんです」(吉川さん)