増え始めたインバウンド「翻訳アプリに頼っちゃダメだな、と」
そして最近になって外国人客が増えると、外国語での接客という新たなテーマがやってくる。タブレット端末の翻訳アプリを利用することもできるが、「それだけではダメ」とふたりは口を揃える。
「英語は……得意じゃないんですけど、だけど翻訳アプリに頼っちゃダメだな、と。英語しゃべれますか?と聞かれて、NOと答えたら終わりですが、そうじゃなくて身振り手振りも使ってなんとかコミュニケーションを取ろうとしています。
そうしていると、お客さまから『Very Good!』って言っていただいたりして、やる気になりますね。で、あとで翻訳アプリを使って調べてみて、次からはこう言おう、とか勉強しています」(山口さん)
吉川さんと山口さんに限らず、「花嫁のれん」のアテンダントはマニュアルばかりに頼らず、利用者ひとりひとりにあった接客、サービスを考えながら乗務しているという。山口さんは、「2号車に置いてあるノートに、結婚記念日で来ましたと書いてあるのに後から気がついて、悔しかった」という思い出を語ってくれた。そういうことがないように、積極的に、だけど旅のじゃまにならないコミュニケーションで乗客をもてなしているのだ。
「冬になるとたくさんの白鳥が…」
もう「花嫁のれん」に乗って1年になる吉川さんと山口さん。吉川さんには、まだ乗ったことがない人に向けて「花嫁のれん」の見どころを教えてもらった。
「だいぶ先になりますが、冬になるとたくさんの白鳥が飛来するところがあるんです。もうほんとうに、何羽か来るというレベルじゃなくて、真っ白になるくらいの白鳥が。ぼくらもご案内するので、楽しみに来ていただきたいですね」(吉川さん)
北陸は、来年春に北陸新幹線の金沢~敦賀延伸という大事業を控える。山口さんにとっては、まさに地元の近くに新幹線がやってくる、ということになる。それを踏まえて、山口さんに将来の展望を聞いた。
「その先、に興味を持って頂けるようなおもてなしをしたいですね。新幹線が敦賀まで延伸しても、敦賀だけで完結するのではなくて、その先、私の地元の小浜線にも観光列車が走るようになりますし、もちろん福井、石川、富山とかにも足を伸ばしてもらいたい。そういうきっかけになるような接客を続けていければと思います」(山口さん)
数ある観光列車の中で、長く人気を保っている列車にはそれなりの理由がある。旅の楽しみのひとつは、地元の人たちとの交流だ。それを移動の列車の中で楽しませてくれる観光列車。そういう意味で、アテンダントの存在はただの乗務員ではなく、想像以上に大きなものなのかもしれない。
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