なので、『笑顔の写真』といいまして、私たちの素顔の笑顔の写真を窓口に貼ったりしていました。できるだけ安心して利用していただきたいですし、お客さまが来ないから自分たちの気持ちも暗くなるんじゃなくて、明るい気持ちをキープしよう、と」(山口さん)
地元的な“距離感の近さ”があるからできること
いっぽうの吉川さん。高等専門学校で学んでいた吉川さんが、卒業後の進路として選んだのがJR西日本だった。
「私は普段から通学で電車に乗っていたんです。福井から鯖江まで、普通電車で通っていました。で、たとえばなんですけど、学校帰りに発車時間ギリギリに駅に着くじゃないですか。ホームまで走っていくと、ほんのちょっとだけ車掌さんが待ってくれたりするんですよね。そういう人情味のあるところがいいなと思ったんです。
私は保線なのでその車掌さんとは会ってないんですけど、結構よく聞くんですよ。学生の頃に接客してくれた車掌さんが、入社後に上司になって面倒を見てくれた、とか」(吉川さん)
JR西日本というと、数千人の社員がいる大企業。ただ、地域に密着している現場では、意外とこうした家族的なエピソードがあるようだ。そして、そうした距離感の近さは、地域との関わりにおいても意識している。「花嫁のれん」での接客などは、まさにそうだ。
「友人に地元のおすすめのお店とかって聞くじゃないですか。お客さまは、それと似たような感覚でアテンダントにも聞いてくれていると思うんですよ。地元の詳しい人がいうなら間違いないと思って。
だから、有名なお店も抑えますし、知る人ぞ知るお店も抑えます。羽咋にある砂浜を走れるドライブウェイとか。いつかまた来られたときにも、『あのときアテンダントに教えてもらったところに行ってみよう』って思って頂ければ、地域が盛り上がるひとつのきっかけになるのかなと思っています」(吉川さん)
「花嫁のれん」は、列車が登場したときには和倉温泉の高級旅館・加賀屋のスタッフがアテンダントを務めていた。その伝統は今も引き継がれていて、吉川さんや山口さんら社員のアテンダントも乗務する前に加賀屋で研修を受ける。サービスやマナーの訓練を行って、所作ひとつひとつのていねいさを身につけて初めて、「花嫁のれん」に乗れるのだ。
「一流のおもてなしを教わって。初代のアテンダントの加賀屋の方から、絶対にレベルを落とせないなという思いは持っていますね。最近はコロナ禍が落ち着いて、外国人のお客さまも増えていますが、ちょっと前までは地元の方が乗ることも多かったんです。遠出が出来ないということで、県内で楽しむことを見つけようという。そのときは、地元の方でも楽しんでもらえるように、魅力を見つけてもらえるように、というのは意識していました」(吉川さん)