『新しいカギ』(フジテレビ)はチョコレートプラネット、霜降り明星、ハナコをメインキャストに据えた『オレたちひょうきん族』以来続くフジテレビ伝統のユニット番組。コントを中心にした総合バラエティで、2021年4月にレギュラー化されると、同年10月から「土8」(土曜20時台)枠に移動した。久々の大型コント番組ということで期待されたが、クイズ作家をモデルにした「ヤノとヒダカ」というニッチすぎるコントなど局地的に爆発したりはしたものの、正直言って当初は、その期待を上回ることはなかった。

 しかし、昨年末あたりからにわかに番組が躍動し始めた。そのひとつの起爆剤になったのは、昨年11月から始まった「学校かくれんぼ」という企画だ。フジテレビの美術スタッフが予算と手間を惜しまず本気で製作した隠れ場所にレギュラー陣が隠れ、学校の生徒達が探すというもの。全員見つけたら100万円分の図書カードが贈呈される。

 5月13日の2時間スペシャルでもその第6弾が行われた。今回の舞台は全校生徒1900人を誇るマンモス校・私立叡明高等学校。生徒が多い割に学校は狭めのため隠れる側からすると難関。7人の演者たちは細かな汚れやヘコみまで再現し中をくりぬいた自販機や柱などに息を潜めて隠れる。それを全生徒が躍起になって探す。その熱量は凄まじい。見つければ自由に写真を撮れるのだが、生徒たちに取り囲まれる光景はスターそのもの。テレビならではのスケール感が熱を生んでいる。

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 そんな“青春バラエティ”路線に舵を切った『新しいカギ』は、先月から「学校の先生と漫才グランプリ」もスタートした。『M-1グランプリ』王者の霜降り明星・粗品やせいや、ウエストランド井口らがそれぞれ、その学校の先生と漫才をするという企画だ。審査員は校長、生徒会長に加え、本家『M-1』でも審査員を務める山田邦子を起用する力の入れっぷり。2回目となる今回は女子生徒が8割を占める市立川越高等学校。『M-1』風の煽りVTRで彼らと組む先生が発表されると生徒たちは大盛りあがり。会場に悲鳴にも似た歓声が響き渡る。まさに熱狂だ。

山田邦子 ©文藝春秋

 学校のあるあるネタを盛り込んだ漫才に生徒たちは大ウケ。先生もしっかりと練習してきたのがわかるし、組んだ芸人も先生の面白さを的確に把握し引き出している。おそらく何時間も時間をかけて作り上げたのだろう。若者のテレビ離れが叫ばれて久しいが、『新しいカギ』に前のめりで参加する高校生たちの姿には、それを吹き飛ばすカギがある気がしてならない。手間暇を惜しまず本気で高校生たちと“真剣勝負”をしているからこそ、熱狂が生まれているに違いない。

INFORMATION

『新しいカギ』
フジテレビ系 土 20:00~
https://www.fujitv.co.jp/newkey/