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 その後、母校・智辯和歌山高の監督に就任。恩師でもある名将・髙嶋仁の後継という重圧を背負いながらも、2021年夏の甲子園で全国制覇に導いた。

 その2人の活躍が、中込はたまらなく嬉しいのだという。

「中谷が優勝したら、俺の名前が出るじゃん? お客さんも言ってくる。頑張ってくれているから、いいのよ、いい、ホントに。それでダメになっていたら僕も責任を感じるし、あの事件があったから、こいつはダメな人間になったとか、そうやられた方がいやだ。逆境でそういうこともあったけど、それを乗り越えて頑張っているという方が嬉しいよね。俺が精神的に強くしてやった、みたいなね。うははははー、そんな感じ」

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 山村も中込も“あの一件”の後、見事なまでに立ち直っている。その再出発のために、中込は親身になって寄り添っていた。

「オレは“悪名”でいいんだよ」

 そのことを、自分から話したりはしなかった。悪名を否定することもしなかった。

「いい、いい。それでいい。いい人でありたくないから」

「俺は“悪名”でいいんだよ」

 山村宏樹と中込伸。

 2人の間に起こった出来事として“報じられている内容”は、その全体像からすれば、ほんの一部分にすぎなかった。抜け落ちてしまっている要素も、説明され尽くしていない内容も、そして私たちの取材が及んでいない部分も、あまりに多過ぎる。

 なのに「中込=悪役」の図式だけは、四半世紀近い年月が過ぎても、実に強固なのだ。

「でも、それでいいんだよ。悪名だよ」

 そう言って、明かしてくれた中込の“ポリシー”に、笑いをこらえられなかった。

「死んだ人って、2回死ぬっていうじゃない? 人間として死ぬ。で、噂や話にも出ないようになって、それが2回目。2回目に死んだら、もう人間はダメっていうよね。悪名でもなんでもいいから、ずっと言ったらいいんだよ。僕は、逆に今言ったように、野球人としてはもう死んでいるわけだから、またこうやって、マスコミの人が話を聞いてくれたらまたネタになる。そうして、ずっと生きているんだよ」

 じゃあ、2度目に死ぬ前の遺言ですね、これ?

「そういうこと、うははははー。そうそうそう」

 悪ノリ気味にそう中込に告げたら、大笑いしてくれた。

 山村が「中込のせい」と言ったと思い込んでいた

 ただ、一つだけ、中込が“誤解”していたことがあった。