中山キャスターはMCとしてバランス志向なのか、根っから前向き志向なのか。本心がどこにあるのかはわからないが、少なくとも“性加害”という言葉があまり強調されない放送だった。過去に起きた事実を検証して問題の広がりや深刻さを見つめようという意識よりも、「前に進んでいければ」と過去を直視しない姿勢だと筆者の目には映った。
調査についての対応策を発表しないジャニーズ事務所とまったく同じではないか。
ジャニーズ事務所が発表した「3つの対応策」について、「シューイチ」は一切批判的な論点を加えず、調査を外部(第三者委員会)が実施すべきかどうかという点にもまったく触れていない。結果として中丸さんが主張する「(ジャニーズ事務所も)社会貢献している」という要素を強調する放送だった。
「地ならし」「論点ずらし」のための放送だったのか
「シューイチ」は第一線で活躍する現役ジャニーズタレントの中丸さんにコメントさせ、「3つの対応策」について聞いたものの、ジャニーズ事務所での少年への“性加害”問題についての話だったのを“社会貢献”へとトピックを移してしまい、気がつけば「第三者委員会」による「調査」の是非という重要な論点をウヤムヤにしていた。
テレビ番組は、いつの間にか、ジャニーズ事務所が一方的に発表した対応策をそのまま受け入れて解説するだけの報道を繰り返している。当初にかなり言われていた「第三者委員会」による徹底した調査もどこかに行ってしまった印象だ。むしろタレントのプライバシーや“加害者”が死亡したことを理由に事務所側は消極姿勢だ。それを批判する報道も数えるほどになっている。
「前向き」と表現しながら批判的な視点がなく、事務所の発表をそのままに伝えるだけのテレビ。「シューイチ」での中丸さんと中山キャスターのやりとりには、これ以上、この“性加害”をほじくりたくないという番組側の意向が見え隠れした。
外部による調査は「なし」という方向で既成事実化する気配が濃厚である。
「シューイチ」での中丸発言は、“外部調査なし”によるジャニーズ事務所への風当たりを弱めていこうとする「地ならし」「論点ずらし」だったのではないか。そう考えてしまうほど、不自然な放送だった。
週に一度の情報報道番組がわざわざ「論点ずらし」の放送をした目的は、芸能界の巨大権力と呼ばれて続けたジャニーズ事務所への“こびへつらい”ではないことを願いたい。1週間前の“東山発言”と比べ、ザラザラと後味の悪さを残す“中丸発言”だった。