故・ジャニー喜多川氏による“性加害”問題は、このところ日曜ごとに大きな出来事が起きる。そこではテレビを舞台にした「かけ引き」が続いている。5月28日(日)にはジャニーズ事務所側の意向に添ったような「論点ずらし」放送が行われた。
まずここまでの経緯を簡単に振り返っておこう。
東山紀之は「そもそもジャニーズという名前を存続させるべきなのか」
5月14日(日)夜、ジャニーズ事務所は“性加害”問題で事務所としての公式見解を初めて公表。藤岡ジュリー景子社長の動画とQ&Aのコメント文をネット上に公開した。すぐにテレビ等で速報され、翌月曜には各社のニュース番組、情報番組で報道された。実態調査のあり方をめぐる議論では登場した解説者やコメンテーターは「信頼できる第三者委員会で調査すべき」という声が圧倒的に多数だった。
5月21日(日)朝、ジャニーズ事務所所属タレント最年長の東山紀之さんが自ら司会するテレビ朝日のニュース報道番組「サンデーLIVE!!」で初めてコメントした。「そもそもジャニーズという名前を存続させるべきなのかも含めて」「透明性をもってこの問題に取り組んでいく」と異例とも言える踏み込んだ発言を行った。
この発言を受けて、番組コメンテーターを務める中央大学法科大学院の野村修也教授(弁護士)は以下のようにコメントした。
(野村修也教授)
「大事なのは調査と相談。それからもう一つは再発防止をどうするかということだ。この調査は非常に大事でやはり事務所がもみ消しているのではと思われることは絶対に避けなければいけない。ですから徹底的にやらなければいけない」
テレビ・新聞の有識者は「外部の第三者委員会で調査を」
野村教授は、「第三者委員会」という言葉こそ使っていないものの、弁護士らの信頼すべき専門家がジャニーズ事務所から「独立」した「外部」のチームとして調査をすべきだと主張。事実上、第三者委員会による調査を提言した。
野村教授は被害にあったタレントらのプライバシーを守り、再発防止を徹底するためにも、信頼性のおける独立したチームが必要だと訴えた。
こうした意見表明は野村教授だけではない。ジャニーズ事務所の“性加害”については、主要メディアに登場する有識者の多くが「第三者委員会による調査」が必要だと主張している。
テレビでも、元NHK解説委員でジャーナリストの柳澤秀夫さん(フジテレビ「イット!」5月15日)、TBSの辻真報道局社会部長(TBS「Nスタ」5月15日)が、「外部」の「第三者委員会」が「調査」を行うのは必須だと述べている。
ジャニーズ事務所の「3つの対応策」に“外部調査”はなし
ところが5月26日(金)、ジャニーズ事務所は、「外部」による調査をすっぽり落としたかたちの「3つの対応策」を発表した。
(1)所属経験のあるすべてのタレントを対象に外部相談窓口設置
(2)社外取締役の就任
(3)外部専門家3人による「再発防止特別チーム」設置
再発防止特別チームは「外部」で前検事総長の林眞琴弁護士が座長を務める。相談も「外部」の心療内科医が関与する。しかし、実態調査を「外部」で行うことは対応策には入っていない。調査をこれ以上行わないつもりらしい。