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――私もご一緒した機会はありましたが、コロナ前は対局者を交えての食事会、打ち上げが普通でしたね。

木村 そう。それがないのはさびしいというか、だいぶ変わったなという感じですね。藤井さんとの王位戦は私の4連敗で、もちろん「タイトルを取られちゃったなあ」というのはあるんですが、それと同時に1局は勝ちたかった思いもあります。もちろん、シリーズが始まる前は当然4勝するつもりでいるんですが、その気持ちがだんだんとしぼんでいくんです。それでも1局は入れたかったというのが、一番の悔いですね。

――それからの藤井さんの強さに関してはいかがですか。

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木村 タイトル戦番勝負で1回も負けずに現在に至るのはさすがとしか言いようがありません。「何がすごいんですか」と聞かれても、それを表現しにくいんです。それだけ充実していると思います。

約10年ぶりに1日制のタイトル戦へ出場

――王位失冠後の木村九段は、その1年後に王座戦で永瀬王座に挑戦しました。

木村 よく挑戦できたなあという感じでしたね。王位獲得後から時系列順に言うと、まずA級から落ちて、王位を取られて、ろくなことがなかった時代です。なぜか王座戦だけに星が偏りました。挑戦できた理由はまったくわかりません。

2020年8月19~20日に行われた第61期王位戦七番勝負第4局 ©相崎修司

――藤井、永瀬と、後輩とのタイトル戦が続きました。

木村 自分がそういう年齢に差し掛かったということでしょうが、当たる方が変わったなあという印象はありますね。王座戦では本戦メンバーがそろうとインタビューがあるのですが、その時に私は「意外と若い人が多いですね」と言いました。ところが永瀬さんは「年配の方が多いですね」と言ったんです。なんと言ったらいいかわかりませんが、そういうものなんだなと(笑)。

※木村九段が挑戦した第69期王座戦の本戦メンバー16名のうち、木村九段より年長だったのは佐藤康光九段と深浦康市九段の2人。永瀬王座より年少だったのは藤井聡太竜王、三枚堂達也七段、大橋貴洸七段の3人。

――1度タイトルを獲ってからのタイトル挑戦についてはいかがですか。

木村 タイトル戦に出られることはうれしいことでしたが、1日制のタイトル戦を指すのが10年ぶりくらいで感覚がよくわかっておらず、それが悪い影響を及ぼさなければと思っていました。将棋そのものは永瀬さんの将棋を調べて、いつも通りやるしかないという感じでしたね。

――王座戦は1勝3敗の惜敗でした。その後、22年の3月に順位戦のB級1組から降級しますが、1期でB級2組からB級1組へ復帰されました。