『日本史を暴く 戦国の怪物から幕末の闇まで』(磯田道史 著)中公新書

 著者は新たな歴史的発見のため、古文書を求めて日々足繁く古書店をめぐり、旧家を訪ねる研究者。その研究成果を、執筆活動やメディア出演を通じて世間に広めてきた。映画化もされた『武士の家計簿』を始め、ベストセラーも多数。

 本書はそんな人気の著者が読売新聞で長年連載中のコラムに加筆し、まとめた新書の3冊目。明智光秀や織田信長といった戦国時代の傑物たちや、坂本龍馬や西郷隆盛ら幕末・維新の偉人たちの意外な一面を紹介したり、はたまた忍者の実像に迫ってみせたり、カブトムシの普及過程を掘り下げたり……取り扱ったテーマは硬軟取り混ぜ、実に幅広い。日本史の中の「疫病」にまつわる題材を扱った回には、新聞掲載時の世相も色濃く反映されている。

「著者は以前から、『現在の出来事にどう歴史の知見を活かすか』を強く意識されていて、新型コロナウイルス下の連載であったことの影響も当然、大きかったですね。現代のパンデミックに意外な観点から光を当てる内容は、前の2冊にはない本書の特色です。江戸時代のマスクの話なんて、私も読んで驚きました」(担当編集者の田中正敏さん)

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 中公新書全体で比べても女性読者が多く、読者の男女比はほぼ半々。若い読者にも届いている。読み心地にこだわった親しみやすい文章がハードルを下げているようだ。

2022年11月発売。初版3万部。現在6刷21万5000部