1ページ目から読む
3/5ページ目

――イベント的なことはそれくらいですか?

杉本 旅行的なことをする一門もあるのかな。私自身は、自分の師匠と弟子たち4人で旅行に行ったことはありますけど、今は弟子が多すぎるのでちょっと難しいですかね。あと、女性の弟子もいるので、旅行のときは部屋とかどうすればいいのかとか、いろいろ考えてしまって。

室田 女子側は手配しますよ(笑)。

ADVERTISEMENT

師匠をすると、嬉しいことや大変なことが半々

――杉本先生が、初めてお弟子さんを取られたのは、いつのことですか。

杉本 31歳とか32歳だと思いますね。

――当時としては早い方ではないでしょうか。

杉本 今でこそ20代の師匠も珍しくない時代ですけど、当時はおそらく最年少に近い師匠でした。

――それは何かきっかけがあったのでしょうか。

杉本 やっぱり東海地域に現役棋士が少なかったので、依頼される機会が多かったんですね。それがきっかけですね。

杉本昌隆八段
1968年愛知県名古屋市出身。板谷進九段門下。1990年四段プロデビュー。

――最初に弟子にした方というのは。

杉本 竹内貴浩指導棋士四段です。プロにはちょっと届かなかった。

――師匠をやると、この本のタイトルにあるように「つらい」ことや、大変なこと、また楽しいことがあるかと思うのですが、そのあたりお聞かせいただけますか?

杉本 どっちから話しますか?

中澤 ふふふ(笑)。

――どっちが多いですか?

杉本 うーん。つらいと大変は少しちがいますよね。嬉しいことと、大変なことだったら、半々だと思います。嬉しいこととつらいことだったら、嬉しいことの方が多いですね。いやあ、これも半々かなぁ。

弟子との別れはなんともいえない寂しさがある

――大変なことの一例にはどんなことがありますか?

杉本 それはやはり弟子がプロになれるかどうかですね。それが師匠の役割ですから。最終的に弟子がプロにならないと、弟子に取ったことに対する責任を感じます。中澤さんは、プロの資格をもっている状態から弟子に取ったのでいちばん安心できたのですが、それ以外の弟子はプロを目指している段階で取っているので、3年後、5年後、10年後にプロになれるかを見守るその期間が大変です。まあ、本人の方が大変ですが師匠も大変ですね。ですから奨励会の結果は非常に気になります。

――辛い話かもしれませんが、お弟子さんがプロになれなくて奨励会を退会されるときは、師匠としてどういう心持ちですか?

杉本 そうですね。それまで毎月のように会っていた子が、もう来なくなるわけですから、なんともいえない寂しさがありますね。弟子との別れですよね。まあ、ただ棋士の世界は、8割はプロになれないので、いつかその日がやってくるという覚悟はお互い持ちながらの付き合いなんです。

――では逆にプロになれたときの喜びは、なかなか言葉にできないものですか。昨年の10月には、斉藤裕也四段がプロになられましたが。