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杉本 昇段を決めた日は1局目に負けて、今回は難しいんじゃないかと半分諦めていたようなところがありました(奨励会の三段リーグは1日に2つの対局がある)。彼は25歳と年齢的にも余裕がない状況だったので、このまま数年経ってしまうと退会してしまう。今だから言えますけど、もちろん来期も来々期もあったんですけど、辞めるときの挨拶までリアルに浮かんでしまったんですね。それくらい1局目を負けたときはがっかりしました。

「斉藤さん上がったみたいですよ」と職員に言われ…

――本書の中でも、鹿児島でその瞬間を迎えられたシーンについて書いておられました(第71回「弟子がくれた幸せ」)。みなさんで結果が反映されるホームページを何度もクリックされていたとか。

杉本 そうですね。あのときは白玲戦の対局で理事の仕事として鹿児島の指宿にいました。斉藤がどういう状況かは、その場の関係者の方もわかっていて、同じ画面を何度もクリックして。

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――1局目に負けて、2局目、斉藤さんはご自身が勝つだけじゃダメだったんですよね。

杉本 もう他力になったんですね。他力になったらダメだろうと。あれは、ちょうど終局後、感想戦を見ている最中でした。そこに職員がこそこそって入ってきて、私を呼び寄せ廊下に出たとき「斉藤さん上がったみたいですよ」って言われまして。それから急いでメールを打ったんですよ。藤井竜王・名人に。

藤井聡太竜王・名人 ©石川啓次/文藝春秋

――まず藤井さんに(笑)。

杉本 斉藤には少ししてから送った気がしますね。

――藤井さんからは、なんて返ってきたんですか?

杉本 たしか「おめでとうございます。嬉しいです」といった返事があった覚えがあります。

昔は「そうちゃん」と呼んでいた

――藤井竜王・名人と斉藤四段の出会いというのは、かなり昔のことですか?

杉本 二人は長いですよ。研修会の頃からだから。年は5つ離れているけど、小学2年生と中学1年くらいからずっとライバルですね。

――斉藤さんは、藤井竜王・名人のことをなんて呼んでいるんですか。今度ABEMAトーナメントで同じチームですよね。

杉本 藤井くんというときもあるけど、今は公の場では藤井先生と呼んでますかね。

 

――藤井さんは?

杉本 昔は斉藤くんだった気がしますね。子どもって「くん」って呼ぶじゃないですか。

――よく落語の一門だったりすると、1日でも早く入った人が兄さんになって必ず敬語で話すみたいなのがありますけど、そういうのはないですか。

杉本 たしかに1日でも早いほうが兄弟子ですね。中澤さんは藤井竜王にとって年上の妹弟子ですけど、呼び方に関しては年上の人は「さん」で呼び、年下の人は「くん」で呼ぶのが通例ですね。

――室田さんは、藤井竜王・名人のことを「そうちゃん」って呼んでいたという記事を拝見したんですが。

室田 そうです(笑)。

――今はなんて呼んでいるんですか?

室田 今は、藤井くんです。

――中澤さんは?

中澤 こういう機会でしか名前を呼ぶこともないので、藤井先生とか藤井竜王・名人になりますね。