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松本 話し合いがこじれると、家族関係がぎくしゃくしちゃう可能性もありますよね。親の「死」に伴うことだから、暗い雰囲気になってしまう恐れもある。

――どうやって話を切り出せばいいかわからない人は多いと思います。

松本 専門家の方は、明るい話題として話を切り出したほうがいいと言っていました。例えば、「お父さんの一番大切なものって、何?」「この家の中で、お母さんが大事にしたいものを1つ選ぶとしたら?」という感じで。

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 ほかにも、「一緒に家を片づけよう」とか「これ私が使いたいから、使わないなら持って帰ってもいい?」と聞くのもいいみたいです。時間はかかるかもしれませんが、とにかく親の気持ちに寄り添うことが大切ですね。

――きょうだいがいる場合、相続についても話し合っておくべきですよね。

松本 きょうだいが複数人いると、相続のときに揉めることもあるみたいで。例えば家を相続するとき、処分したい人と維持したい人で意見が対立してしまったり。

 これも専門家の方が言っていたのですが、きょうだいの中でリーダーを決めて、その人を中心に相続のことを決めていくのも1つの方法みたいです。

 

20代、30代の方も親や実家と向き合う時間を作ってほしい

――著書でも、松本さんの経験談や専門家の方々との対談が参考になると話題です。

松本 固い内容の本だと思われて、なかなか手に取ってもらえないかな、と最初は思ったんですけど。私の失敗談とかを包み隠さず書いて、少しでもこれから実家じまいをする人の手助けになればいいなと思っていたら、想像以上の反響で驚きました。

「私の実家はこういうことに困っているんです」というお手紙をたくさんいただいたり、実家じまいに関する講演会をさせていただくようにもなりましたね。

――最後に、実家じまいについて、文春オンラインの読者にもメッセージをいただけますか。

松本 20代や30代の方々は、親の死や実家じまいについて、まだ無関心かもしれません。私もその年代のときは、微塵も考えたことがなかった。でも、誰もがいつかは通らなければいけないことなので、ゆっくりとでもいいから、親や実家と向き合う時間を作ってほしいと思います。

 ただ、話しにくい話題でもあるので、そういうときはぜひ「松本明子がこんなことで困っていたらしいよ」と私の本を引き合いに出してみてください。私の経験が、家族で話し合うきっかけになれば嬉しいです。

 

撮影=三宅史郎/文藝春秋

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。