プロ棋士になるための登竜門とも呼べるのが奨励会だ。ではその奨励会を目指すための実力をつけるにはどうすればいいのか。そのための一つの機関が「研修会」である。いきなり奨励会試験を受けるのは敷居が高くとも、アマチュア有段者の実力があれば入れる研修会で自身の実力を測りつつ、技術の向上を目指すのだ。

 研修会は上から順にSからF2まで13のクラスに分かれており、15歳以下の会員がA2、18歳以下の会員ならばSに昇級すると奨励会6級に編入できる。また、研修会には女流棋士養成機関としての側面もある。女性会員がB2に昇級すると、女流2級の資格を得ることができる。

 現在、研修会は関東、関西、東海、九州、北海道、東北と、6つの地域に設けられている。それぞれの研修会で幹事を務める、阿部健治郎七段(東北)、石田直裕五段(北海道)、長谷部浩平五段(関東)の3名に話を聞いた。(全2回の1回目/続きを読む)

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左から順に阿部健治郎七段、石田直裕五段、長谷部浩平五段

研修会に来るのはプロ志望だけではない

――改めて、幹事の皆さんにお聞きします。まず、研修会とはどのような場所でしょうか。

石田 将来、プロを目指す子どもがいるイメージが強いと思われていますが、半分以上の会員はプロ志望というより、もっと強くなりたい、将棋を通して仲間を作りたいという意識で通っていると思います。技術を身につけたお子さんが地元の将棋大会で活躍するようになるというのも研修会の役割ではないかと考えます。

阿部 将棋連盟のHPにもある通り、女流棋士を目指すためには必須な場所で、また棋士を目指すためにも最適ではありますが、将棋を楽しむという目的で来てもOKです。むしろプロを目指すために特化した機関と思われるのは……、アマチュア選手として活躍する技術を身につけるために来ている会員も多いですね。

長谷部 私はこの4月に幹事になったばかりの新米ですが、お二人もおっしゃったように、プロ志望だけではなく、将来、アマ選手として地元での活動を目指す方もいますね。

長谷部浩平五段

研修会と奨励会の違いとは

――研修会と奨励会の違いはなんでしょうか?

長谷部 奨励会だと、礼節への指導も多いですが、研修会では最低限ですね。例えば対局中に立膝をついている子がいたりすると、注意するくらいです。

石田 奨励会だと、幹事席の前で会員同士が立ってしゃべっているだけで怒られましたけど、研修会はそこまで厳しくありません。幹事も交えて仲良く話している雰囲気ですね。

阿部 あと、奨励会は例会中の服装もきっちりしていて、例えば中高生だと学生服の子が多いのですが、研修会はみな私服で大丈夫です。奨励会には就職活動のような雰囲気もありますが、研修会はそうではありません。