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阿部 同じ志を持つ子が集まるのが大きいですね。塾のようなものでしょうか。関東や関西のような大所帯とは異なり、地方の研修会ではプロを目指したい子どもの率が高いとは思います。本来、将棋は楽しむために始めて、強くなったらプロを目指すというのが王道だと考えますが、地方の会員の親御さんのほうがよりガチなんですよ。研修会の月謝は1万2500円で、これはどの研修会も変わらないのですが、都会と地方の経済格差で、相対的な負担は地方のほうが大きくなります。結果として親がより真剣になり、その空気が子どもにも伝わります。

小学生なら交通費が子ども料金で済む

――親の負担という意味では、修業時代に地方から奨励会へ通うというのも大変ではと考えます。

阿部 私の修業時代と今ではかなり違ってきてますね。新幹線の路線が増えたのは子どもにとって楽になった部分とも言えますが、東京での宿泊費が以前と比較してだいぶ高くなっています。だからこそ、小学生のうちにチャレンジしてもらいたいですね。交通費は子ども料金で済むため、親の負担が少なくなりますから。子どもへの普及活動はもちろん大事ですが、それを支える親御さんの負担をどう減らすかという点も考えなくてはいけないと思います。

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関東の研修会は東京・将棋会館にて行われている ©️文藝春秋

――負担の軽減に関してですが、今の奨励会は例会終了後、その日のうちに東北や北海道に帰れますか?

石田 私はその日に帰ってましたけど、帰りは旭川に飛ぶ飛行機がなくなっているので、新千歳空港まで飛んで、そこから4時間かけて名寄の自宅です。例会日ごとに往復8時間の運転をしてくれた両親には感謝しています。

阿部 今は未成年がホテルに泊まると、親の許可証なども必要になってくるから、より大変です。

長谷部 私は記録係を務めた時に、将棋会館に泊まるということもありました。

阿部 それも今は出来なくなっているんですよね。奨励会員が記録係を務めて終電がなくなった時は、タクシー代を払ってでもその日に帰らせているはずです。

開始時間をずらしたり、対局を早い時間に終わらせる配慮も

長谷部 逆の意味では、例会の開始時間が早いと前日に会館周辺へ泊まる必要が出てくる場合もあります。私の師匠である大平(武洋六段)が、研修会幹事を務めていた時に、開始時間を9時から9時半へずらしました。

阿部 大平さんの英断ですよね。東北も9時半からです。

石田 北海道や東海、九州は10時に開始です。もちろん、それで遅くなると帰れなくなりますから、遠方から通っている会員には15時くらいで対局を終わらせるというような配慮をしています。通常は17時ですが。帰りを早くしてもその日に4局指せるように、持ち時間を減らしたりしています。これは幹事の裁量でできることです。