秋本さんも裁判の証人として出廷し、ジャニー氏による被害を受けそうになったと証言したという。中谷さんが告白したように、もし実際に起きた事実を嘘の証言で「なかったこと」にしたのであれば、経営トップによる犯罪的な行動をも、力関係を利用して“口封じ”をしたことになる。それでは組織としての適切な意思決定はできない。ジャニーズの再発防止特別チームが「組織のあり方」を根本的に検証するのなら、こうした組織としての根本が揺らいだ時期までさかのぼって調査してほしい。
新芸能学院の裁判から約20年たった1988年、ジャニーズグループ「フォーリーブス」の北公次氏が『光GENJIへ』を出版。この本の中で北氏は、ジャニー喜多川氏からの性被害を赤裸々に綴っている。この本の出版を境に元所属タレントたちが次々に告白本を出すようになる。平本淳也『ジャニーズのすべて』などだ。
ジャニー氏は「セックス的な愛情というのはあり得ない」
1999年10月から「週刊文春」が14週にわたって、ジャニー氏にセクハラ行為があったとするなどのキャンペーン記事を連載した。
1999年11月、ジャニーズ事務所とジャニー喜多川氏が「文藝春秋社」を名誉毀損で提訴した。週刊文春側の証人尋問には元ジャニーズJr.のAさんとBさんが出廷した。ジャニー氏との間に「ついたて」が置かれ、Aさんが証言したという。
15歳、中学3年生でジャニーズ事務所に入ったことや性被害について詳細に証言した。Aさんは、「ジャニー氏に言いたいことは何か」を問われて以下の証言をしたという。
(元ジャニーズJr.のAさん)
「ジャニーさん長生きして頑張ってください」
その後で行われたというジャニー喜多川氏の証人尋問。
(喜田村洋一弁護士)
「わいせつ行為をしたことがありますか」
(ジャニー喜多川氏)
「そういうのは一切ございません。僕はすべて愛情を持っています。お父さん、お母さんが持っているような愛情のつもりでいます。セックス的な愛情というのはあり得ないことだと思います」
5月に性被害を実名で告白した元ジャニーズJr.二本樹顕理さん(39)は、Aさん本人から直接性被害を聞いていたという。
(二本樹顕理さん)
「レベルとしては私よりひどいことをされてました。ああそうだったんだというようなやりとりがあったと思います。『自分もこんなことされたよ』みたいなやりとりもあった」
文藝春秋社との裁判で、ジャニー喜多川氏は「元ジュニアたちは嘘の証言をしている」と当初は一貫して主張した。
ジャニー氏が完全否定の姿勢を崩したワケ
だが、ジャニー氏はそれまでと違う証言もしている。
(ジャニー喜多川氏)
「彼たちがうその証言をしたということを僕は明確には言い難いです」