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 この証言は、Aさんの証人尋問の最後にAさんが発言した内容が効いていたと喜田村弁護士は話す。

 Aさんが最後に「長生きしてください」とジャニー氏への思いやりを見せたことで、ジャニー氏の良心はそれまで貫いていた完全否定の姿勢を自らに許さなかったのだろう。

 このエピソードは、3月のBBCのドキュメンタリーでも報道されている。

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 いろいろな角度から質問していくなかで、ジャニー氏が決定的な証言を出してしまったと喜田村弁護士は分析している。

 東京高裁は、セクハラに関する記事の重要な部分について「真実である」と認定。2004年、最高裁で判決が確定した。

裁判で確定した事実を伝えなかった日本メディア

 ところが、このニュースは日本のメディアではほとんど報じられなかった。

 ニューヨークタイムズが「日本のスター・メーカーに汚点」(2000年1月30日付)と報じ、3か月後に国会でも取り上げられたが、日本のメディアは依然として沈黙を貫いた。

 日下部正樹キャスターは、この「日本メディアの沈黙」について喜田村弁護士に尋ねている。

(喜田村弁護士)
「知らなかった人が多かったでしょう、判決をね。最高裁の決定が出た後も(ジャニー氏の性加害は)まだ続いていたわけです。重要な社会問題については、たとえ対象者が力を持っていようが何であろうが、報道すべきことは報道しなければならない。そのために新たな被害者が出てきてしまったことが、残念ながらこの数か月の間によりハッキリしてしまいましたね」

(日下部キャスター)
「権力ある者に対して、我々は弱者を守る仕事なわけですよ。まったく逆ですよね」

(喜田村弁護士)
「強者のことに慮り、弱者の被害が広がっていったということは痛切に反省しなければいけないと思う」

喜田村洋一弁護士(TBS「報道特集」6月17日より)

「頼むから書いてくれるな」と言われることも

 なぜ日本のメディアは沈黙してしまったのか。

「報道特集」では、元雑誌編集者・浜田敬子さんにインタビューし、「男性の性被害についての知識がすごく少なくて、やっぱり軽視していた」と証言させている。

 これに関連して6月18日の東京新聞朝刊に興味深い記事が載っている。性暴力被害者は「女性」だという思い込みが社会の中に根強くあるという。性暴力の相談にあたる警察職員、弁護士、性暴力の支援団体の相談員などの専門家の間にも、性暴力の被害者=女性という思い込みが強いという。男性や性的少数者の当事者が被害者として相談しても、配慮のない対応や差別的発言を受ける例が珍しくないという。

 浜田敬子さんは、ジャニーズのタレントを載せるかどうかは雑誌の販売の増減にもつながり、会社全体のいろいろな部署が関わっているためにジャニーズの問題を書こうとすると他の部署から「頼むから書いてくれるな」と言われることもある、と証言した。