メディア側には形式だけの検証で終わるのではないかという疑念が根強くある。それだけに中身を伴う検証ができるのか報道の側も目をしっかりと光らせて、今回の「報道特集」のように新たな事実を掘り起こしていくことは必要だと思う。
キャスターたちの“総ざんげ”の中で目立ったキーワードは、「報道の責任」「被害の拡大」「なれあい」「動かなかった」「見逃し」「忖度」などだった。
「キャスターもタレントも言い訳ばかりでもうたくさん」
ネットやSNSの時代に入って、テレビや新聞、雑誌などの旧来メディアに対する若い世代の不信感が根強くなっていることを強く感じる。
今回、「報道特集」が番組として示したことは、民放の番組として「相当な覚悟」の上であることは理解できる。だが、最後に3人のキャスターたちが決意を込めて発した言葉は、Z世代には「言い訳」としか受け止めてもらえないだろう。
筆者が日頃大学で教えている20歳前後の若者たちはなかなか辛辣だ。テレビや新聞という既存メディアへの不信が強まったという声は多い。
テレビ不信の声を以下にまとめてみた。
・テレビには元々期待していないし、ふだん見ることも少ないが、ジャニーズ問題での対応を見てもキャスターもタレントも言い訳ばかりでもうたくさん。
・加害者が死亡した過去の出来事なのに、真実究明にこれほど時間がかかっていることに驚く。メディアにおいても日本というシステムの劣化が欧米以上に深刻ではないか。
・“性加害”にいっさい触れず、何事もなかったかのようにジャニーズのタレントが明るく振る舞い続けている番組も多い。そうしたテレビ全体の姿勢に吐き気がする。
・報道で権力をチェックするというタテマエを言いながら、テレビは大きな権力に屈して押し黙る構図だ。ジャニーズという自分たちにとっても関心が強い問題で、テレビというメディアがダメな現状がつくづく見えてがっかりした。
将来はメディアで働くことを夢見ていた若者たちほど一様に失望している。
キレイゴトではない報道をするために
「報道特集」にしても、ジャニー氏の性加害問題を特集するまでにこれほど時間がかかったのはなぜなのか、番組内で具体的に説明していない。今回の放送を見てもその理由はよく分からない。抽象的な「メディアの責任」をキャスターたちが痛感しても、視聴者からすればシラけてしまうだけだろう。
自らを俎上に載せて検証を進めることで、やっと視聴者に本気ぶりが伝わる、キレイゴトではない報道になるはずだ。
願わくはキャスターたちの本気が「報道特集」だけでなく、TBSの他の番組にも広がっていってほしい。さらにはTBSだけでなく、他の局にも広がっていってほしい。そうした本気が伝わらない限り、まさにテレビというメディアの存在理由が問われる事態が今後も繰り返されるに違いない。ジャニー氏の性加害問題はテレビというメディアにとってまさに試金石なのである。
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