「ジャニーズ事務所とテレビ局は利害が一致する関係」
「報道特集」の番組最後では、視聴率が経営に直結する民放の看板報道番組のキャスター3人が「ジャニーズ事務所とメディアは利害が一致する立場だった」などと自らを強く反省する姿勢を見せた。3人揃って“総ざんげ”のような放送。自局の不祥事後の放送でもないケースでこうした内容は極めて珍しい。
(膳場貴子キャスター)
「ジャニー氏による性加害問題は裁判も行われておりますので、ニュースとして報じるべき機会があったのにもかかわらず、私たちを含め、メディアが取材してこなかったことで被害を拡大させたのはまぎれもないことです。報道に携わる立場として責任を感じています。さらに加えると、長らく男性の性被害に対する認識が甘いまま来てしまったことも問題だったと感じています」
(日下部正樹キャスター)
「この問題が大きく動くきっかけになったのはイギリスのBBC放送の報道ですよね。私が取材した喜田村弁護士はこう表現していました。『黒船の来襲でようやく日本メディアが動いた』
裁判で未成年に対する性加害が事実認定されたにもかかわらず、何も動かなかった私たちマスメディアに対する強烈な批判だと私は受けとめました。ジャニーズ事務所とテレビ局は利害が一致する関係です。だからこそ、なれあいの関係ではいけないんです。これは社会が求めるところです。
報道機関としてまさにその存在意義が問われる局面で、外国メディアが動くまで私たちが少しでも(動くべきなのに)少しも動くことがなかった。これが事実だと思います」
(村瀬健介キャスター)
「すでにありましたように、私たちがこの問題を取りあげてこなかった理由の一つは、テレビ局の様々な部署がジャニーズ事務所と深い関係をもっていることもあったと思いますし、私たちが報道しなかったことで被害が止まらなかったことは本当に深刻なことだと思います。私たちはジャニーズ事務所の問題の他にも今報じるべき問題を見逃したり、忖度したりしていることがないか、改めて考えてみる必要があると思います」
キャスターそれぞれが「メディアの責任」を噛みしめて言葉を発している印象を受けた。
再発防止チームの検証では「なれあい」許さずに
今回、TBSの「報道特集」がこれほど痛切なかたちで自己批判を重ねたことで、今後のジャニーズ事務所の性加害問題の検証や報道はいったいどうなっていくのだろうか。
すでにジャニーズ事務所が任命した再発防止特別チーム(座長・林眞琴元検事総長)が「聞き取り」や「検証」の作業に入っている。今回、60年前の、そもそもジャニーズ事務所設立前の時期からのジャニー氏の“性加害”が明らかになった以上、その時期にさかのぼって検証する必要があるだろう。