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「歩かないで、両側に立つべき」が多数派なのに…「エスカレーターの片側空け」が終わらない根本原因

source : 提携メディア

genre : ライフ, 社会

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日本女子大の教授も「前がずっと空いてても、横に並んでペチャペチャおしゃべり。それに、日本では“親子で乗る時、親は子どもを横に置いて手を引いて”なんていうけど、安全のためというなら、強いものが一段下に乗るべきです。障害者を乗せる時も同じこと」と、片側空けこそが合理的と主張する。

事業者側では、私鉄各社が加盟する日本民営鉄道協会の担当者は「利用者には、歩く人と歩かない人を分ける方式の方が喜ばれるかも知れませんね」と前向きな受け止め方。唯一、営団地下鉄だけが「万が一にも事故が起きたら」日本人は「そういうことを許した側を責めがち」として、「今のところ、皆さん歩かないで乗っていただく建前に、変わりありません」と反対派の立場に立つが、さりとて積極的にPRするわけでなく乗客任せになっているのが実情だったようだ。

こうした声を紹介しつつ、記事は「新型エスカレーターの設置でスピードアップを、という動きもあり、それはそれで結構だ。しかし、エスカレーターの『片側通行』は、うしろから来る人のために道をあけておく『他人への思いやり』を私たちの心に育てる芽にもなる、と思えるのだが」と、片側空けは思いやりであると締めるのだ。

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業界側も「歩行禁止」はハッキリ明言せず

この記事をめぐって20人近い読者から投書が寄せられたことから企画されたのが、7月9日の記事だ。前回の「思いやり」との結論に対し、7割が反対、3割が賛成だったといい、「すり抜ける際にぶつかられたりすると、とくにお年寄りや子どもに危険だ」「障害のある部分が右であったり左であったりまちまち。どちらか片側へ、といわれても……」といった、近年の論点である交通弱者からの指摘がすでに登場している。

反対派の投書は多くが「下りで横を走り抜けられた転落しそうで怖い」という内容だったが、日本昇降機安全センター(現日本建築設備・昇降機センター)の専務理事は「個人的には、歩くことをおすすめしない」とした上で「アメリカの統計によると、上りより下りの方が事故が少ない、というデータがある。下りは上りより、みんなが気をつけるからでしょう」と擁護気味だ。