竿を曲げる大物の正体とは…?
仕掛けを投入している付近ではクロダイが優雅に泳ぐ姿も見られるなど、お魚もオフモードかと思っていたら、ついに竿先に反応が! 竿を手に取ると、手元まではっきりと引き込むアタリが出た。合わせてみると、フグではない大きな魚がかかっていた。
ゴン、ゴンと首を振り一向に浮き上がろうとしない力強さ、これはクロダイか。慎重に浮上させると……。
ついに念願のクロダイが釣れた!
まるで鎖帷子を身にまとったメタリックなボディに威厳のあるヒレ。40cmに満たない個体でも、近海の大物の風格が十分に伝わる。
美味しくいただくために、その場で血抜きをして17時30分にフロントへ持ち込んだ。
自分で釣った魚が即座に豪華な刺し盛に
ミッションを無事にクリアし、あとはテーブルに運ばれてくるお料理を堪能するのみとなった。昨晩と早朝に釣ったシロギスは天ぷらとお造りに。
お刺身の食感はモチモチで香りもよく、白身魚の中でもとりわけ味わい深い。天ぷらはお刺身で感じた芳醇さをそのままに、サクサクの衣とふわっとした身の食感がやみつきになる。
シロギスは必ず釣っておきたい魚だ。
またコース料理にはご当地の食材もふんだんに登場。
3種類の貝の食感と甘さを食べ比べてみると、特にアカニシガイは噛むとキノコのように旨味があふれ出し一風変わった食感が楽しめた。
肉料理の薬膳鍋には能登牛と能登豚が使用され、スパイシーな香りのスープとお肉の軟らかさが印象的だった。
どうしても肉や魚に目が行きがちだが、焼茄子ムースや焼茄子の田楽仕立てなどの野菜料理も、食材の甘さや香りが引き立てられた上品なお味でコース料理の楽しみの一つだ。そして最後は、多田屋産と言っても過言ではないプライベート桟橋で釣れたクロダイのお造り。
大海を生き生きと回遊するかのような華やかな盛り付け。身も透明感があって鮮度は抜群。それではいただきます。
身が引き締まっていて非常に噛み応えがある。釣れたての魚は驚くほど身が硬いのだが、その生きた食感が良い。はじめは味が薄く感じてしまうが、すぐに飲み込まずしっかり咀しゃくすることで旨味が徐々に口に広がって美味しさを実感する。
熟成させた身とはまた違う味の変化を堪能できるのが調理サービスの醍醐味であろう。間違いなく2人前の量だったが、一人で完食した。