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「お局」「笑わないなんて生意気」とバッシングが…「なぜこんな風に扱われるのか不思議だった」安藤優子(64)が学者になることを選んだワケ

「お局」「笑わないなんて生意気」とバッシングが…「なぜこんな風に扱われるのか不思議だった」安藤優子(64)が学者になることを選んだワケ

安藤優子さんインタビュー #1

2023/07/16
note

視聴者から「愛嬌がない」「生意気だ」とクレームが…

――「菊の花」的役割について、当時どのように感じていましたか。

安藤 当時大学生でしたけど、学校の中で「お前は女なんだから俺に従え」なんて言う同級生はいないですよね。だから、なんでこの社会は女だというだけで自分を従属的に扱うのか、すごく不思議な感覚だったんです。

 そのうち、視聴者から「女なら愛嬌を振りまけ」とか「笑わないなんて生意気なアシスタントだ」といったクレームが入るようになりました。つまり、視聴者が求めていたのも“男性司会者の横に座ってニコニコと愛想よく笑う、出すぎないかわいい女の子”だったんです。

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 そのことに気づいてから、自分のあり方を変えないとこの世界では生き残っていけないんだと思いました。

 

――「女はこうあるべき」という社会での認識を目の当たりにしたわけですね。

安藤 論文を執筆するにあたって自分の来し方を考えて、じゃあ、この「女はこうあるべき」という認識は誰が作ってきたんだろうと思いました。裏を返せばそれは「男はこうあるべき」でもあって、その中で行き当たったのが、「自民党の女性認識」だったのです。

「女はこうあるべき」研究でわかった、自民党の役割

――「男は/女はこうあるべき」は、自民党が作った価値観だったと?

安藤 そうです。わたしはそれを「イエ中心主義」と名付けました。つまり、女性は「イエ」に従属する存在であり、家庭の中で夫や子ども、祖父母のケアを一手に引き受けることが“理想的な女性の生き方”であるーーという価値観を、自民党が長く植え付け続けてきたのです。

 順を追って説明すると、1970年代、田中角栄が「福祉元年」を掲げ、福祉制度を充実させることを宣言します。しかし、その矢先にオイルショックが起き、高度経済成長が衰退に入ったので、実現させるための予算がなくなってしまいました。そこで台頭したのが「日本型福祉社会論」です。

――「日本型福祉社会論」とは、なんでしょう。

安藤 福祉制度において、欧米を真似するのではなく、日本古来の“ムラ”や“イエ”を見直し、再評価しようという考え方です。具体的には、日本型福祉の柱は家庭にあり、育児や介護といった家庭内の安全保障を“家庭長たる女性”が無償で請け負うことで、国家の福祉予算が減免されるんだ、ということ。

 この考え方は、1979年に出版された、いわば自民党の考え方の手引きである『研修叢書』に登場して以来、自民党の福祉政策や、経済政策の根幹を成してきました。

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