毎月、稼ぐ額は350万円……路上売春をしてまで、恵美奈(仮名、19歳)さんが大金を稼がなければいけない理由とは?
2022年夏ごろから増え始めた10代後半から20代前半の街娼たちの実情を、ノンフィクションライターの高木瑞穂氏の新刊『ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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ホストクラブに使う金は「1回150万を月に2回」
2022年10月中旬――。大久保病院側に立っていた新顔・恵美奈(仮名、19歳)とふたりで職安通り側の路肩に座り、恵美奈の了承を得てから僕はボイスレコーダーの録音ボタンを押した。
約15人の新顔がいたなか恵美奈に話を聞きたいと思ったのは、ほかでもない。恵美奈がいちばん普通だったからだ。できればホス狂い以外の新顔にと思っていたからだ。
地味でも派手でもない服を着て、通りにぽつんと佇む恵美奈は、見るからにどこにでもいそうな19歳で、病んでいる様子がそれほどない。それを下敷きに、なるべくホストクラブに通っているようには見えない子を選んだのである。ファーストコンタクトでキャバ嬢でも風俗嬢でもなく「現役の女子大生」だと話したことも決め手になった。
――立ち始めたのはいつぐらいから?
「最近。7月末とかから。ほぼ毎日立ってる」
――稼げる?
「夕方ぐらいから夜の12時、1時とかまでで、1日15万くらい」
――1回いくら?
「人によるんですよね。たまに相場がわかってない人がいて、3(万円)とか5(万円)とかくれることもあるんですよ。最低は1(万円)でゴム有り。で、本当に焦ってるときは、生外で2(万円)以上とかやる。キスとかフェラはあんまりしたくないから、したいって言われてもキスなしゴムフェラにしてもらってる。生中(膣内射精)とかはやんないですね、病気が怖いし」
しかし僕の思いは空転していく。「焦っている」という言葉の裏に意外性はなく、やはりホストの売り掛け返済のため立ちんぼをしている展開だった。ホストクラブには最近行き始めたと話し、月にいくら使っているのかと僕が尋ねると、「1回150万を月に2回」だと恵美奈は言う。
その「1回150万を月に2回」の内訳は、高級シャンパンをおろすなどして「売り掛けで」と言われ、「他に生活費が50万。だから月に350万くらい必要で、正確な数字はわからないけどそのくらいは稼いでる」と続けたことにはさすがに驚いた。確かに恵美奈は梨花より客が付きそうな印象ではある。それにしても、月に60万円ほどしか稼いでいないと語っていた梨花(#1)に対して、歳も2つしか違わない恵美奈が月に350万円も稼げるものなのか。
ともかく、恵美奈はその数字に嘘はないと重ねた。
「えっ、だって、日に15(万円)稼げば20日で300(万円)ですよ。残り50万なんて2、3日も立てば楽勝だし」
恵美奈が言うように、確かにこの計算どおりコトが運べば無理はない。モヤっとした違和感があるが、そんなものかと納得するよりなかった。