メン地下の“推し活”のため売春を開始
恵美奈は自分といまの担当ホストの関係について、他の子と私は違い、最初は客じゃなかったと強調した。つまり恵美奈は、彼氏彼女の関係とまでは言えないが、自分は「特別な存在」だと言いたいのだろう。だけれども、その「特別な存在」であることすらどこまでいっても自信が持てないと吐露する。
いま入れ込む担当に声をかけられたのは2ヶ月前の夜7時のことだ。他の街娼たち同様に客待ちしていた。そのころ恵美奈は、「メン地下」の「推し活」のため、“現在地”でカラダを売りカネを稼いでは「推し」に貢ぐ日々を続けていた。
「メン地下」とは、小規模なライブやイベントで活動し、若い女性の人気を集める「メンズ地下アイドル」の略称である。若者の間では、応援するアイドルを「推し」、推しを応援する活動を「推し活」と呼ぶ。
恵美奈がメン地下にハマったのは高3のときだ。17歳の終わりからで、ジャニーズの追っかけをしていた母親譲りだとした。
「カラダ(売春)を始めたのは18(歳)になってから。最初はツイッターでのパパ活です。私はカラダをしてまで推しに貢ぐなんて想像してなかったけど、メン地下推しの子ってフーゾクとかやってる子多いから周りに影響されて。で、まだ高校生で風俗で働けない年齢だからパパ活をやった。毎日泣きながらやってた。でも、客の羽振りは良くて、当時はゴム有りで4(万)とか5(万)とか普通にもらえてた」
――泣いてまで売春しなきゃいけないほどメン地下に依存してた。
「依存してたっていうか、周りがチェキとかでいっぱいお金を使ってるのに、自分が使えてないっていうのが悔しくて」
単に推しを独占したいから売春に走ったのではない。周りより容姿スペックが高いと自負している。恵美奈はそこに――そんな私が雑に扱われるなんてと――自尊心をくすぐられたのだ。
「可愛いからお金など使わなくても私は贔屓されるはずだ」と恵美奈は思っていた。だが、アイドルビジネスは競争心を煽りカネを使わせる手法が根幹にあるもので、推しへの消費の多さによりファンの価値は上位に置かれる。それが恵美奈のプライドと共振したのである。