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「私はひとりっ子で、オモチャや食べ物を兄弟と奪い合うなんて経験がない。だから、興味のないことに関しては全く競争心は湧かないけど、自分が好きなことに対しては絶対にいちばんじゃないと嫌だ、っていうのがある。勉強とか運動とかはビリでもいいけど、好きなメン地下に対しては。自分で言うのもなんだけど、私はあの子たちより可愛いから売春すればぜったいに稼げると。だからいちばん稼いでやるってなった」

――なんでさあ、売春してまでいちばんになりたいと思うようになったの?

「えっ、なんでだろう。いや、いちばんになりたいっていうか、負けたくないっていうか。なんだろう、義務感」

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――カラダも心もすり減らして、泣いて。そうまでして全うする強い義務感ってなんだろう。

「よくわかんない。というか、(売春なんて)すぐやめるだろうと思いながらやってました。当初は推しに会いたいから頑張ってたんだと思う。けど、それがいつの間にか義務に変わってきて、って感じ」

ホストに聞かれるままLINEのID交換

 メン地下の推しは主に東京で活動していた。大阪生まれ大阪育ちで、そのころ関西では多少名の知れた大学に通っていた恵美奈は、さらに推し活に励むため大学が夏休みになるのを待って東京に遠征した。

 このとき公園で街娼をすることになる。1回あたりの単価は高いパパ活だが、数をこなすのには限界がある。しかも、新たに東京でパパを探すのも無理がある。そこでメン地下仲間に相談すると公園を勧められたのだ。

 実際に赴いて立っていると、すぐにひとりの男に「遊べる?」と声をかけられる。売春の交渉は始まり、3万円を提示され近くのラブホに。セックスを終えて再び立つと、またすぐ男に声をかけられる。初日から何度も公園とラブホとを往復する。するとそのとき「こんなに稼げるんだ」と味を占めてしまったという。

 街娼行為を覚え、ファンのなかでいちばんカネを使うようになってからも、恵美奈が売春をやめることはなかった。他の子も風俗で働いたりパパ活や立ちんぼをしたりなどしてカネを使っていたので、推しを独占することはできない。それは当然のこととして割り切れてはいたのだが、自分より貢いでいないひとりの子を推しが平等に重宝しているのを見ると我慢できずに、やがて推しに嫌悪感を抱くようになった。