玉川 はい。ゴワゴワしているせいで、選考が終わって破棄するときにシュレッダーのほうが壊れました(笑)。
さとう そんな原稿でも、しっかり読むのがすごいですよね!
玉川 賞はうちの生命線なので、大事に読みましたよ。ちなみに女性の応募者で、原稿に香水をかける方は多いです。
社名の由来は「オーナーの思いつき」
――そもそも、なぜフランス書院は「フランス」なんでしょうか? 何かフランスにゆかりが……?
玉川 当時を知る社員はもうおらず、自分も又聞きの話になりますが、創業オーナーが「官能といえば、フランスだろう!」と勢いで決めたそうです。ありがたい話ですが、これまでフランス関係の団体などからクレームが来たことはありません。
さとう トルコ風呂の場合は、改名運動が起きましたもんね。さすが性愛の国と言うべきか……(笑)。
――創業したばかりの頃は、海外のポルノ小説を翻訳していたと聞きました。
玉川 当時は官能小説が人気で、作品によっては30万部くらい売れていたんですよ。一般文芸でも10万部売れたら大ヒットという現在の出版業界からすると驚きですよね。そんな「売れるから」とたくさんの出版社が官能小説を手がけている時代に、フランス書院が生まれました。初めは海外の小説を翻訳していましたが、当然、そのうち作品が尽きます。だからといって人気作家さんの奪い合いに新規参入するのは無理がある。
しかもその頃の官能小説の世界では、作家さんが雑誌で連載していた作品をまとめる形で書籍を出版するのが主流だったにもかかわらず、そもそもフランス書院は雑誌を持っていない。不利な状況の中、「じゃあ新しい作家さんを発掘して、書き下ろしで本を出そう」という逆転の発想で成功を収めることができました。
――「フランス書院文庫官能大賞」のような小説コンテストを開催し、新人作家を見つけるのでしょうか?