玉川 新人作家さんには「官能小説の世界は、文章の上手さコンテストではありません」とよく伝えています。読者のニーズを読み取れる作家、もしくは自分が描きたいものと読者の求めているものがぴったり重なる作家はやはり売れます。官能に限らず、小説全般に言えそうな話ですが。
さとう 漫画でも同じことが言えますね。絵が上手いに越したことはありませんが、絵が上手ければ売れるというわけでもない。
――なるほど……。近年、話題になった作品を教えてください。
玉川 電子書籍で展開している「フランス書院eブックス」で、風見源一郎先生の『俺の妹が最高のオカズだった』シリーズがヒットしています。もともとネットで話題になっていたところにお声がけさせていただき、コミカライズも展開しています。
さとう フランス書院文庫の表紙イラストはリアル寄りのタッチですが、「フランス書院eブックス」は萌え系の表紙ですね。ぱっと見ただけでは、普通のラノベと変わりません。
玉川 おかげさまで若い読者さんに支持していただけています。
『週刊少年ジャンプ』のような編集部でありたい
――歴史の長い会社はどうしても守りに入ってしまいがちですが、フランス書院では新しい動きをずっと続けているのがすごいですね。創立当初は「作家さんを発掘し、文庫書き下ろしで出版する」という施策が人気を集め、現在は、小説投稿サイトから作家さんを発掘したり、若者向けに電子書籍で展開しているという。
玉川 名前を出すのもおこがましいですが、フランス書院は『週刊少年ジャンプ』のような編集部でありたいんです。あそこは大御所作家さんでもアンケート結果が悪いと、連載を続けることは難しいと聞いています。もちろん新人作家さんばかりになりすぎても良くないので、長年のファンがいるベテラン作家さんも大切にしながら、レーベルのバランスをとりたいと思っています。
新しい作家さんを入れると、自然と新しい感覚が入ってきます。新しい作家さんを切れ目なく投入しているのが、うちが続いている理由かもしれません。いつだって時代を打ち壊していくのは新しい才能だと思っています。