「外では『師匠』と呼ばせています」
――入門してからは親子ではなく師弟であるという見方がクローズアップされがちですが、その点に関してのメリハリの付け方などはいかがですか。
久保 一門で研究会をするときにはひとりの弟子として接しようとしているつもりです。そういう場所で私が娘を呼ぶときには「久保さん」。娘が私に話しかける時には「師匠」と言うように伝えています。
塚田 うちも外では師匠と呼ばせているのですが、さすがにプライベートの範疇だと線引きできないんですよね。
――将棋界の親子棋士では、木村義徳九段がお父さんの義雄十四世名人ではなく、加藤治郎名誉九段の門下に入門した例がありますが、あえて他の棋士の門下にするという選択肢はありましたか。
塚田 多少は思いましたが、いろいろ考えて不便だなと。中村さんに冗談ぽく頼んだら「嫌です」と即答されました。そうだよなあと一人納得です(笑)。
久保 私も多少は考えたんですけど、自分が師匠のほうがいろいろと対応しやすいかなと思いました。
厳しさを増す女流棋界で生きる娘に思うこと
――実際に女流棋士を目指すと聞かされて、親として、あるいはこの世界をわかっている者としての心配などはありませんでしたか。
塚田 女流棋士にはなれそうな気がしていましたが、なってからも厳しい世界ですからね。プロになってもタイトルを目指さなければ意味がありません。女流棋士になった直後は心配していませんでしたが、数年経っても勝たないので……最近はようやく安堵できるようになりました。
久保 勝つか負けるかの世界で自分の大変さもわかっていたので、特に勧めたりはしませんでしたね。やはり将来はタイトルを目指す棋士になって欲しいですが、プロになりたてでまだ弱く、これからの数年が勝負でしょう。
――女流棋界は直近の10年、5年だけでもだいぶ変わってきました。
塚田 女流の棋戦が増えたのはいいことですよね。ただ女流順位戦ができてある意味厳しくなった面はあります。これまでは曖昧だった女流棋士としての位置がハッキリと順位付けされますから。女流順位戦でA級には入ってほしいなと思っていたので、まずはよかったのですが、来年どうなるか。プレーヤーとしてはいい環境だと思います。
久保 棋戦数が増えたことで棋力の向上にはつながっていますよね。より強い女流棋士が出てくると思います。
写真=杉山秀樹/文藝春秋