2014年に16歳で女流棋士デビューを果たして、今季は女流順位戦でA級昇格を果たした塚田恵梨花女流二段。昨年、やはり16歳で女流棋士デビューを果たしたばかりの久保翔子女流2級。二人の共通点は、ともに父親が現役のプロ棋士であることだ。
父親であり師匠でもある塚田泰明九段と久保利明九段に、「女流棋士の娘」との向き合い方について語ってもらった。
親子・師弟で棋風は似てくる?
――お嬢さんが女流棋界を戦う上で、このような助言を行ったというのはありますか。
塚田 単純な技術の視点で、とある局面でどう指すかと聞かれて、答えたというのはあります。
久保 女流棋士になってから何度か指しました。娘も振り飛車党なので、私が居飛車側をもって、こういうところが弱点になる、と教えました。
――久保先生は親子で振り飛車党ということですが、親子・師弟で棋風は似てくるものでしょうか。
塚田 どうなんでしょうね。ただうちは私が「攻め」の棋風で奥さん(高群佐知子女流四段)が「受け」だから、バランスは取れているのかな。「どうやったら勝てるかという局面で攻め一辺倒ではいけない」とも伝えました。ただ私の将棋をよく見ていたので、ベースは攻めのようです。そういう意味では似るのかもしれません。
久保 うちの場合、振り飛車党なのは一緒ですが、娘は受けの棋風で「そこまで受けるのか」というところまで受けるタイプです。では木村さん(一基九段)のようなイメージで指すのがいいのでは、とアドバイスしました。相振り飛車では相手の攻めをすべて受け止めて勝つという振り飛車党にしては手厚く珍しい棋風です。娘が強くなる段階では、相手を攻めても受け切られるということが続いた結果、自身のじっくりした棋風が形成されたのではと思います。
ニコニコ動画やABEMAの番組で親子共演
――お嬢さんが女流棋士になってから、親としてあるいは師匠として気づかされたことはありますか。
塚田 職業は一緒ですけどねえ(笑)。どうですか?
久保 いや~。
塚田 娘がニコニコ動画で聞き手デビューをした時は、一度だけ親子でやらせてくれとドワンゴさんに言ったことがあります。聞き手も女流棋士の大事な仕事で、他の先生に失礼があってはいけないと思い、まず私を相手に1回やれば大丈夫と思ったら、それが意外と好評で奥さんとも一緒に出ることになりました。親子の共演は途中から気にならなくなりました。ただ解説中に変なミスをしないかというようなことは気にします。
久保 私は親子共演はやりづらいですね(笑)。共演ではないですが、娘がABEMAの番組に出ることになり、スタジオまで連れて行きました。自分はすぐに帰りましたが、数人の女流棋士と収録を経験して、勉強になったと思います。