将棋界における「親子棋士」は12組の例がある。そのうち、親子ともに現役であるのは、塚田泰明九段・恵梨花女流二段と久保利明九段・翔子女流2級の2組だ。

 塚田九段、久保九段のお父さん両名に登場いただき、「女流棋士の父あるある」についてざっくばらんに語ってもらった。

ともにタイトル経験者である久保利明九段(左)と塚田泰明九段(右)

ビシビシやり過ぎて、娘は一度やめました

――塚田先生、お孫さんのご誕生おめでとうございます。

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塚田 ありがとうございます。今後は、将棋と子育ての両立を頑張ってほしいと思います。

――最初にうかがいたいのですが、お二人はお嬢さんに将棋を教えようと思われた、あるいは実際に教えられたのですか。

塚田 将棋は素晴らしいゲームですから、当初からルールは教えようと思っていました。実際には私ではなく奥さん(高群佐知子女流四段)が、恵梨花が小学1年の時にルールを教えていました。

塚田家の塚田恵梨花女流二段(左)、高群佐知子女流四段(中央)、塚田泰明九段(右) 写真提供:塚田泰明九段

久保 私は自ら教えようとは思いませんでしたが、翔子が「やってみたい」と言ってきたので教えました。4歳の頃の話ですが、その時はビシビシやり過ぎて、娘は一度やめました(苦笑)。自分も最初に教わったのが4歳の時だったので、それを踏まえて厳しくしても続くかと思いましたが、自分と娘は違いますね。

――将棋を覚えられてからはいかがですか。

塚田 小学4年の時に小学生駒姫名人戦に参加しましたが、その時はルールがわかっているだけでしたね。相居飛車には棒銀、対振り飛車には居飛車穴熊と奥さんが教えていました。そのとき優勝した竹俣さん(紅元女流初段・現フジテレビアナウンサー)には手ひどく負かされたけど、2勝して予選を通過できて、勝つ楽しみと負ける悔しさの両方を知ったのか「ちゃんと覚えたい」と言い出しました。

 それからは自分が教えてもよかったのですが、近くに初心者指導に定評がある棋友館(小田切秀人指導棋士六段が講師を務める、こども将棋教室)があったので、そちらに通いました。

久保 翔子が小5のころ、次女が初めて将棋大会に出るというので、「じゃあ私も」ということに。初心者クラスで1勝できたことが楽しかったようで、また将棋を始めましたね。

盤を挟む久保利明九段と翔子女流2級 写真提供:久保利明九段

勝つ喜びを教えるべき指導対局なのだが…

――プロ棋士には指導対局が付きものですが、他のお子さんに教えるのと、自分の子どもに教えるということの違いはありますか。

久保 指導将棋で小さい子どもと指すのとでは、全然違いますよね。指導対局のように相手に勝ってもらえるように指すということができません。強い手を指すことはありませんが、つい普通にやってしまいます。

塚田 指導対局では詰まないこちらの玉を詰むように進めるけど、相手が詰ましてくれないんですよね。指導では相手が子どもに限らずとも、まず勝つ喜びを教えたほうがいいと思います。

――厳しくするというのは「自分の子どもを甘やかしているように見られたくない」という面があったのでしょうか。