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菊地 『ノルウェイの森』もオーディションで役をいただいた作品ですけど、そもそもトラン・アン・ユン監督は私に興味がなくて、「まあ、会ったところで……」というスタンスだったんです。私のそれまでの作品を観て、役に合わないんじゃないかって。

『ノルウェイの森』で監督を驚かせた役作り

――役柄の年齢とは開きがあると感じていたそうですね。

菊地 でも過去作を観て、役のイメージと違うのは当たり前だし、それでも演じるのが私の仕事だから、ちょっと寂しいなと思ったんですね。トランの映画も、村上春樹さんの原作も大好きでしたから。じゃあ会えないなら仕方ないので、ビデオオーディションだけでもやりたいと頼みこんで、無理やりやらせてもらった結果、翌日にトランから呼ばれたんです。それで会いにいくと、「どうやって役を作り込んだのか?」って。

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 ちょうど『ナイト・トーキョー・デイ』(2009)を撮影していたときで、トランは私が殺し屋役に扮しているのを知っていたから、「短期間でどうやって?」と思ったらしいんです。でも私は「役をいただいていないのに、それはちょっとお話しできません」って。何様? って自分でも思いますけど(笑)。

©榎本麻美/文藝春秋

――『バベル』の頃には、まだ演技に自信がなかったんですよね。

菊地 はい、そうです。

――でもその頃には自信を持てるようになっていた、ということですか?

菊地 いえ、全然そんなことないです。ただあのときは、役がどんなことを考えているのか理解できたと思う瞬間があって、ビデオオーディションの時点でそこまで持っていけたんですね。だからもしかしてチャンスがあるかもとは思いましたけど、俳優業そのものに対する自信はまったくなかった。いまだにないです、自分のキャリアについて大丈夫だと思ったことは。自信があるとしたら、役を自分の中で理解し、どう表現するのか、そのアプローチの仕方に関してだけかもしれません。(#2へ)

撮影 榎本麻美/文藝春秋
スタイリスト 小嶋智子
ヘアメイク 中村了太(3rd)
衣装協力 CFCL

INFORMATION

菊地凛子が主演を務める映画『658km、陽子の旅』が7月28日に公開されます。
https://culture-pub.jp/yokotabi.movie/