文春オンライン

北の大地の“最果てのターミナル”「稚内」には何がある?

「稚内」であったこと #1

2023/08/14

genre : ニュース, , 社会

note

 日本最北端のまちは、蘂取村という。北方領土のひとつ、択捉島にあるまちだ。正確には、北海道蘂取郡蘂取村、そのカモイワッカ岬が日本最北端だ。もちろん北方領土は正真正銘の日本の領土なのだから、蘂取村は紛れもない最北端のまちである。

 などいっても、現実に目を向ければ択捉島には日本の施政権は及んでいない。蘂取村とされる場所も、現実にはロシアが支配している。なので、日本人なら誰もが気軽に行くことができるようなまちではない。そして、すべての人が気軽に訪れることのできる最北端というと、やはりご存知、稚内ということになる。

“最果てのターミナル”「稚内」には何がある?

 北方領土を除けば、稚内市内にあるものはすべて日本最北端。宗谷岬という最果てはもちろんのこと、コンビニも郵便局も、稚内市内でいちばん北にあるそれは、日本最北端のコンビニ、郵便局だ。そして、駅もそうである。宗谷本線の稚内駅は、日本最北の駅であり、最果てのターミナルである。

ADVERTISEMENT

北の大地の“最果てのターミナル”「稚内」には何がある?

 そういうわけで稚内駅を訪れたのだが、これがまたとてつもなく遠い。1日1往復だけ、札幌からの特急「宗谷」が走っている。朝7時30分に札幌駅を出発するこの特急が稚内駅に到着するのは12時42分。つまり、実に5時間以上もかかるというわけだ。スピードが違うので比較するのもおかしいが、新幹線ならば東京と新大阪を往復してもあまりある。

今回の路線図。札幌から5時間以上かかる、まさに“最果てのターミナル”「稚内」

 そもそも、宗谷本線という路線そのものが、大動脈でありながらもなかなかに乗るのが難しい。列車の数が著しく少ないのだ。

 同じ“本線”といっても、東海道本線や山陽本線などのように捉えては、まったく本質を見誤る。途中には士別や名寄といった町もあるにはあるが、ほとんどは人里離れた天塩川沿いの渓谷か、サロベツの原野をひた走る、そういう路線である。

 

 ちなみに、札幌と稚内は高速バスでも結ばれているが、そちらの所要時間は6時間弱。いずれにしても、稚内は日本最北端という最果てだけあって、文字通り果てしなく遠いのである。

 まあ、身も蓋もないことをいえば、稚内には稚内空港という日本最北端の空港があって、羽田空港からも2時間ほどで行くことができる。そう考えると、とたんに東京から大阪よりも近くなるのだから、文明の利器というのはとにかく偉大なのである。

 ともあれ、そんな最果てのターミナル・稚内には何があるのだろうか。