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シンプル極まる構造のホームに降りると…

 稚内駅のホームは、1面1線。ターミナルというのはさすがに言い過ぎだと思うくらいに、シンプル極まる構造をしている。稚内駅に到着する列車は特急を含めて6本、出発する列車は7本だけだ。

 

 それが駅に着いてしばらくして折り返すだけだから、この程度の規模でも充分なのだろう。ホームの上には、日本最北端の駅であることを示す標が立ち、JR最南端の駅である西大山駅や、最南端の終着駅である枕崎駅との友好も刻まれている。

 さらに、小さな改札口を抜けて駅舎を出た先にもレールの車止めが置かれていて、最北端のターミナルとしての旅情を誘う。その車止めの周りで写真を撮っている観光客もちらほら。やっぱり、稚内まで来たら抑えておくべきポイントのひとつなのである。

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 などと書き連ねると、最北端のターミナルは小さくても旅情たっぷりの駅というイメージを抱くかも知れない。筆者とて、そんな光景を期待して稚内駅を訪れた。が、実際にはまったくそんなことはない。駅舎は「キタカラ」という複合施設との合築になっている。施設の中には、飲食店や土産物店、コンビニなどが入る。

 このあたりまではまだ普通だが、加えてグループホームや映画館「T・ジョイ稚内」までが揃っている。規模は小さいがいわゆるシネコンで、もちろん日本最北端の映画館だ。この稚内駅は、鉄道の駅であると同時に道の駅でもあり、さらに近くのフェリー乗り場のターミナルも兼ねるみなとオアシスとしての役割も持つ。つまり、稚内という町の文字通りの中核的な施設になっているというわけだ。

駅のすぐ東側には大きな港が。このフェリーは…

 稚内駅のすぐ東側には、大きな港がある。その中心にあるのはフェリー乗り場だ。利尻や礼文といった離島との連絡フェリーが発着する乗り場で、コロナ禍前まではサハリン南部のコルサコフまでの定期航路も発着していた。陸の玄関口が稚内駅だとすれば、海の玄関口がこのフェリー乗り場ということになる。

 
 

 そのフェリー乗り場を中心にした広い港には、たくさんの漁船が停泊している。漁船は大小さまざまで、遠くには水産加工の工場も見える。稚内は水産業が中核産業のひとつだ。北洋漁業を中心として、ホタテ貝やホッケなどがよく獲れるという。フェリー乗り場を含め、港町であるということが最北端・稚内のアイデンティティのひとつになっているのだろう。