「カニの値段は、稚内で決まったんですわ」
いまでこそ、ウクライナ侵攻の影響もあってロシア人を稚内の街中で見かけることはほとんどなくなった。ただ、タクシー運転手氏の話によると、以前は1日に1000人ものロシア人が上陸、カニやウニなどの水産物を水揚げして(つまり日本に輸入して)いたとか。「カニの値段は、稚内で決まったんですわ」とは運ちゃんの談。
稚内駅周辺の市街地のすぐ西側は山になっていて、稚内市の市街地は山と海に挟まれたわずかな平地に集約されている。そこを貫いて通っているのが、ひとつは宗谷本線、もうひとつは国道40号だ。
国道沿いを南に進むと、途中で宗谷本線と交差しつつ、南稚内駅方面へと向かう。南稚内駅は最初に稚内に設けられたターミナル。いまでも駅の近くに蒸気機関車の転車台の残骸が残っていて、往時の賑わいが偲べる。いまでも南稚内駅には特急が停まるから、最果てのまちの第2のターミナルといったところだろうか。
実際、南稚内駅の周辺にもホテルがあるし、旅人をそこそこ満足させるような小さな飲食街もある。さらに駅の南側一帯には、いわゆるベッドタウンが広がっているようだ。また、南稚内駅に近い国道40号沿いは、とても最果てとは感じさせないような、ジスイズロードサイドでもある。マクドナルドにすき家、ツルハドラッグに紳士服のはるやまと定番揃い。これらにもきっと、“日本最北端”の冠が付くのだろう。
ローソンがついに稚内に!…というけれど…
港にはたくさんの漁船が停泊し、水産加工の工場とおぼしき建物の中では黙々とホタテの殻を剥く人の姿が見え、あちこちでみかけるロシア語の案内。こうしたあたり、実に最果てらしいし、極端な言い方をすれば日本であって日本でないような、そんな錯覚にすら陥りがちだ。国境の町、という言葉が実にふさわしい。
が、国道40号沿いのロードサイドを見れば、あたりまえのことだが、やっぱりここも歴然としたニッポンであった。ロードサイドのチェーン店ほど、遠くに旅してきた旅人を安心させる風景はないのではないかと思う。
ちなみに、この夏にオープンして話題になった、稚内のローソン。その場所は南稚内駅より南側に広がるベッドタウンの中だ。
ローソンがついに稚内に!などとネットで騒がれていたが、もちろん稚内にもコンビニはたくさんあります。そう、みんな大好きセイコーマートがあちこちに。やっぱり最果てであろうとなかろうと、稚内は絶対的にニッポンだし、そしてセイコーマートはスゴいのである。
写真=鼠入昌史
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