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〈前妻(ジュンコさん)は、被告人松永から受けた暴力について山口県萩警察署に被害申告した上、山口市の婦人相談所に入所し、その間に離婚調停を申し立て、同年3月に離婚調停を成立させ、長男は前妻が引き取った〉

松永から暴力を受けた緒方純子は自殺未遂を図り…

 なお、松永と緒方が初めて肉体関係を持ったのは82年10月頃のこと。つまり、妻のジュンコさんが身籠っている時期にあたる。それから2年ほどして、松永から日常的に暴力を受けるようになった緒方は、彼がワールドの本社ビルを建設中の85年2月に自殺未遂を図る。

 そこで松永は「純子さんをこのまま放っておけばまた自殺するかもしれませんよ」と緒方の両親を説得し、緒方はそれまで勤務していた幼稚園を辞め、ワールドが従業員用に借りていたアパートに住むことになった。さらに彼女は、本社ビルが完成してからは、ワールドで事務員として仕事を始めるようになる。

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中学生時代の松永太死刑囚(中学校卒業アルバムより)

 この時期の緒方の心情について、一審での緒方弁護団の弁論書には次のようにある。

〈緒方は、松永が自分と別れる意思がないことを知り、そのような松永に抗って、実家に帰っても松永の執拗な性格から、家族に却って迷惑をかける、また、仕事を続けても松永から職場に嫌がらせがなされると思い、他方、松永が自分を放さないのは愛情があるからだ、松永が暴力を振るうのも自分に悪いところがあるからであって松永の愛情の証しだと考え、更には、自分のために(※松永がかつて緒方に語っていた)ミュージシャンの夢を捨てた、家庭もめちゃくちゃになったと言う松永に申し訳ないと負い目を感じ、とにかく自分が松永の元にいたほうが人に迷惑をかけない道だ、との思いから松永と行動を共にすることを決めたのである〉

 先に松永と緒方が初めて肉体関係を持った時期について記したが、それは緒方自身が法廷で証言をしたからである。なお、その際に彼女は、松永が初めてのキスの相手であり、初体験はそのときだったとも口にしている。

 手練れの松永にとって、男性経験のなかった緒方を御するのは、まさに「赤子の手をひねる」が如きことだったのかもしれない。