文春オンライン

「清掃の仕事はキツい。3Kって言われてる」「社会的地位も低い」歴20年超の“日本一の清掃員”がそれでも清掃業を心から愛するワケ

『世界一清潔な空港の清掃』より #2

note

 イギリスにある世界最大の航空業界格付け会社・スカイトラックス社が公開している格付けランキングにおいて、2016年から8年連続で「世界一清潔な空港」に選ばれている羽田空港。その羽田空港の清潔さを支える清掃のプロフェッショナルとして、2015年、2019年にNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で取り上げられたのが、“スゴ腕”の清掃人・新津春子さんだ。

 その新津さんに「一目ぼれ」したのが、「プロフェッショナル 仕事の流儀」ディレクターの築山卓観氏。築山氏は、現実の戦争の真下であまりにも無力な子どもたちのありのままを映し出し、視聴者の涙を誘ったNHKスペシャル「ウクライナ 引き裂かれた子どもたち」「キーウ 子どもたちの冬」。さらには国際エミー賞にノミネートされた「この素晴らしき世界 分断と闘ったジャズの聖地」など、数々の名ドキュメンタリーを制作し続けている。

 ここでは、清掃のプロとして活躍する新津さんの著書『世界一清潔な空港の清掃』(朝日文庫)より一部を抜粋し、築山氏が、2014年に「プロフェッショナル 仕事の流儀」で新津さんに密着取材した際の秘話を公開する。(全2回の2回目/1回目から続く)

ADVERTISEMENT

写真はイメージです ©iStock.com

◆◆◆

新津さんのこと

「誰がやったから、じゃないのよ。きれいですねってお客様が思ってくれる、それで十分じゃないですか。お客様が喜んでくれれば、それでいいんです」

 密着ロケの終盤。深夜3時、誰もいない羽田空港のトイレでこの言葉を聞いた時、思わず熱いものがこみ上げてきたのを今も鮮明に覚えています。ビル清掃のプロ・新津春子さんが教えてくれた仕事の流儀。私にとっても今、仕事に向き合う時の大切な指針です。

 2014年10月。私は「プロフェッショナル 仕事の流儀」というドキュメンタリー番組の取材で、羽田空港にいました。企画していたのは「清掃のプロ」。日本の清潔さは、まさに世界屈指、ならばその美しさを支えている凄腕清掃員もいるはずだと考えたのです。そして幾人もの清掃員の方を取材していく中で耳にしたのが「羽田空港に、日本一の清掃員がいる」という噂。こうして人づてにたどり着いたのが新津春子さんでした。

「待たせたねー、場所わかりにくかった? ごめんなさいね!」

 人懐っこい笑顔で迎えてくれたのは、想像よりも小柄で細身の女性。体力勝負の清掃で技能日本一と聞き、勝手に大柄でたくましい女性をイメージしていた私にとって、終始ニコニコ顔で全く凄みを見せない新津さんは、正直意外でした。

関連記事