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お金をかけずに練習するため、テニスクラブへ入会

ーーほかのインタビューによると、まずは横浜のテニスクラブに通ったそうですね。

市川 テニスを始めるにあたってググったら、普通の初心者はテニススクールに通うもので、選手はテニスアカデミーで練習をしているんだと。すぐに大きいアカデミーに電話したら「2ヶ月前に始めました。プロになりたいんです」「え? いや、ちょっと……」って感じで、迷惑電話と思われてしまって。

 何軒か電話しているうちに、大きめのアカデミーから「日本ランキング200番からじゃないと受け付けてない」と言われて、「ああ、そういうものなんだ」と。じゃあ、そこまでなんとか自分で持っていかなきゃいけないと考えたんですよ。

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 マンツーマンでテニスを学ぶって選択肢もあったろうけど、バイト暮らしで経済的にムリだったし、実家も最初に話したようにぜんぜん金持ちじゃないですから。

ーーそれでテニスクラブへ。

市川 とにかくお金をかけずに、練習を死ぬほどするしかないなって。そうしたらテニスクラブの存在を知ったんです。テニスクラブってヨーロッパでポピュラーなんですけど、会員になるとコートが使い放題ってシステムで。

 日本でも、クラブによっては値段の高くない学生会員やヤング会員があって、月1万円ぐらいで入れるところが多いんですよ。月1万円なら、スクールの月謝とあまり変わらないので「こりゃいいや」と。

オーナーがレッスン代も取らずに毎日練習を見てくれた

「我流でもなんでも練習しまくってやる」と、近所のテニスクラブのオーナーに会いに行って。ドレッドヘアで、テニスラケットを持って「プロになりたいので、ここで練習したいんです」なんて話すもんだから、オーナーは「なんなんだ、コイツは?」って顔をしてましたけど。

「ちょっと考えさせて」と言われたけど、1日か2日そこで練習させてもらっていたら「うちでやるか?」ってOKが。そこは朝の9時から夜の10時までやっていたので、開いてから閉まるまで練習してました。

 

ーーオーナーの方は、市川さんになにかを感じたんでしょうね。

市川 当時60歳くらいでオープンな方で。コーチもやっていて、レッスン代も取らずに毎日練習を見てくれて。

 トレーニングにもなるからって、家からリュックを背負って40分ほど走ってクラブに通ってたんですよ。夏に汗だくで走ってたら、オーナーが「使え」って自転車をくれて。テニスシューズもレンタル落ちのものをくれたし、僕を見ていた会員さんがラケットのおさがりもくれて。