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「チーム全員が本当に勇気付けられました」慶應義塾高校野球部・森林監督が名指しで称賛を送った“ある人物”とは

『Thinking Baseball ――慶應義塾高校が目指す“野球を通じて引き出す価値”』より #2

2023/09/10
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 そういう大人にならないように、高校生の段階から、人生における自分なりの物差しを持つ準備をさせないといけません。それはつまり、考える力が自然と身に付くことや、人生の選択肢が増えることにつながります。あえて大胆な言い方をさせてもらえば、勉強もその一つです。勉強することが将来の可能性を広げ、選択肢を増やしてくれます。もちろん勉強を始めるのは何歳からでも遅くありませんが、例えば30歳になってから一念発起して医学部に行くという人は非常に稀です。現実がそうであるなら、やはり高校生までに一定の勉強をして、論理性を高めたり、思考回路を柔軟にしたり、考え方を増やすことは非常に大切です。それが将来の可能性を広げ、選択肢を増やしてくれるのですから。

3年間企業に勤めて感じたこと

 高校野球において、勝利のために練習に時間を割くことは当然、必要です。しかし、本当にやりたいことが見えてくるのは大学生になってからという人が多いので、そのときに手遅れではない程度の勉強はしておかなければいけませんし、最低限、そのための努力は惜しまずにしておくべきです。

 私自身も、大学卒業後は3年間NTTに勤め、法人営業を担当し、会社員を経験しています。野球からは大きく離れてしまった時期ですが、いま思い返せば、現在の高校野球の監督業につながる貴重な経験をさせてもらったと思います。

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 特に感じるのは一人の無力さ、そしてチームで協力し、調和を取りながら物事を進めていくことの大切さです。外に出てお客さんと接することの多い部署だったのですが、仕事をスムーズに進めるためには、他部署の人たちと連携を取り、社内に数多くいる専門家からアドバイスをもらう必要があります。その上で現場に同行してもらったり、あるいは工事を行う場合には、技術者など専門部署の協力を仰がなければなりません。この経験を通して、自分一人でできることは限られていると痛切に感じましたし、これはどんなチームや組織でも同じだと思います。

部員一人の行動が組織全体の評価に影響する

 現在担っている監督業に置き換えても、細かいところまですべて一人でコーチングできるわけではありません。部長や副部長、学生コーチと連携して初めて、チームはうまく回っていく。組織全体で一つのことを成し遂げていくという感覚がなければ、どんな仕事であってもスムーズには進行していかないはずです。

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