絵を描くこととか文章を書くことが好きだったので「そっちへ行きたい」と言ったら、母も含めて周りは「将来、美大・芸大に行っても自立は難しい」とか言うので、県立大学の受験をすることにして。
大学受験を失敗し、「18年の期待を裏切ったわね」と言われ…
――学校での英語のテストではいつも100点を取られていたのだとか。
東 ずっと100点で、クラスメイト全員の前で先生から結果を発表されるわけです。だから「次も100点を取らなきゃいけない」と思って頑張って勉強するんですね。ところがある日、ケアレスミスで「when」と「where」を間違えて98点になってしまって。
「東ちづる、100点から脱落しました」と先生に言われたときに、悔しいというよりも「これで解放された」という気持ちの方が強かったのを強烈に覚えています。
――そのときの結果はお母様に報告をされましたか?
東 しました。でも、母がどういう反応をしたのかは覚えていないんです。
――東さんは18歳のとき、大学受験を失敗されたと伺いましたが、そのときのお母様の反応は覚えていらっしゃいますか。
東 私の賞状がたくさん並んだリビングで、ボソッと「18年の期待を裏切ったわね」と言われました。ある意味、私の中でスイッチが入った瞬間だったと思います。「私の人生は、母が敷いたレールの上にあるのかな」というような。それまでは「自分は好きなように生きている」と思ってたんだけど。
高校3年間の記憶がない
――東さんはその発言を受けて、どういった返しをされたのですか。
東 言われた瞬間の記憶はすごく鮮明にあるんだけど、そこからの記憶がないんです。だから大した返しはしていないと思います。やっぱり気付いてないふりをする方が楽なので、深く考えずに。でもその言葉が脳裏に焼き付いていて、30代を過ぎた頃にフラッシュバックしたんですね。
だから、そこで喧嘩になった方がよかったのかもしれない。「私はあなたの人生を生きているわけじゃない」とか「あなたができなかったことを私にさせようとしないでよ」とはっきり言った方がよかったんじゃないかと。
――後になってそう思えても、当時はそうは思えなかったのですね。
東 受験って人生の岐路でしょう。特に私たち島の人間にとっては「そこから出るか出ないか」という分岐点でもある。そういう大きな重圧の中で、もう1人の自分が、俯瞰して自分を見ているような感じだったんだと思います。ずっとそれで悩んでいるわけではないんですが、とても複雑で。
さっきも触れましたけれど私、高校生のときの3年間の記憶がないんです。(続きを読む)
撮影=三宅史郎/文藝春秋
![](https://bunshun.ismcdn.jp/common/images/common/blank.gif)
INFORMATION
![](/mwimgs/1/5/-/img_158dd87c1dddd323e0b364ff1db995a1414814.jpg)
東ちづるさんが、現代風にアレンジしたメジャーな妖怪からオリジナルの妖怪まで61体を自ら描き、社会風刺を交えながら解説した書籍「妖怪魔混大百科(ようかいまぜまぜだいひゃっか)」(ゴマブックス)を7月24日に出版。
詳細はこちらから→http://www.goma-books.com/archives/64029
◆出版を記念して原画展も開催中!
『妖怪魔混大百科』原画展 with Get in touch
日程:2023年9月8日(金)~9月24日(日)
時間:11:00~19:00
場所:日比谷OKUROJI
入場:無料