「お医者さんがそうゆうのだから」そう言い聞かせてきた、のに……
「先生、やっぱり亮夏の成長、かなり遅くないですか?」
出産した病院での定期健診や、ことあるごとにいろんなお医者さんに尋ねた。でも、
「亮夏くんは早産による修正月齢が入っているからねえ。発達は多少遅くても仕方ないんよ」
「個人差があるからねえ」
「いったん様子を見ましょう」
とかしか言われない。予定よりもずっと早く生まれ、ずっと小さく生まれたのだ。たしかに他の子との差があっても仕方ないのかもしれないとも思えた。
「まあ、そんなものか」と帰ってくるのだけど、数日経つと
「いや、やっぱりおかしいやろ」と悩み出す。
しかし最終的には
「でも、お医者さんがそうゆうのだからきっと心配はない!」
そう言い聞かせてきた、のに……。
「何でもっと早くに連れてこなかったのか」ってか。
「何をしていたの」ってか。
何の言葉も出てこず、ただ悔しさだけがふつふつとこみ上げてくる。その後に続いた先生の言葉は私の頭の上のほうをたださらさらと流れていった。
「なんで」の理由がわかって、そのことにただホッとした
でも、その一方で私はどこかでホッとしたのだ。なぜミルクを飲まないのか、いつまでも首が座らないのか、1人で遊べないのか、笑わないのか、寝ないのか、泣き続けているのか。母子手帳に書いてあることが全部当てはまらないのか。
「なんで」の理由がわかったからだ。
先が見えないことや、理由がわからないことはめちゃくちゃ不安だ。原因が何であれ、とにかく理由がわかった。そのことにただホッとした。それに正直、無知すぎてピンとこなかったこともある。
脳性麻痺とは、わかりやすく言えば筋肉の障害だ。出産時に酸素がうまく脳に回らなくて、脳の一部が大きくダメージを受けた。亮さんの場合はそれが運動機能をつかさどる部分だった。