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安住アナの大きな影響力

 この定例会見での社長コメントについて、9月20日当日のTBSのニュース番組では報道されなかったのに、なぜ翌朝の安住アナの番組で放送したのだろう。そこには安住アナの立場が関係していると筆者は見る。

 実は安住アナは単なる社員アナウンサーではない。役員待遇という立場で、社員アナとしては最高位にある。一方で、人気アナランキングでは毎回男性アナでトップを争う存在でもある。それだけに彼の一言が対外的に与える影響は大きい。

TBS ©文藝春秋

 ジャニーズ事務所の会見直後はTBSに限らず、テレビ各局が同じようなコメントを一斉に発表して、「テレビの横並び体質」「『マスメディアの沈黙』の背景のひとつ」と厳しく世間から批判された。TBSのコメントも「ひきつづき」や「より一層」といった言葉を使って、「自分たちは以前から取り組んできましたが……」というニュアンスを込めているように見えた。批判の対象になっている「マスメディアの沈黙」という自分たちの問題に言及しない姿勢こそ、テレビへの不信感をますます増幅させる要因と言えるだろう。

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 安住アナは対視聴者という意味では、社長以上にTBSという会社を代表している顔である。そんな安住アナの“コミュニケーション能力”にあえて視聴者への説明を託そうとしたのではないか。

「検証や改革が足りないと自覚」という安住アナの言葉

 安住アナは社長のコメントを伝えたスタジオで、個人的な思いを以下のように述べた。

「私もTBSで働く人間の一人としてこの社長の会見をしっかり見ましたが、私自身としてはまだまだ検証や改革が足りないと自覚しています。少なくともこの番組の中で皆さんに進捗状況をお伝えしてまいりたいと考えています」

TBS「THE TIME,」9月21日放送より

 この締めくくりの言葉をどう解釈すればいいのか。「私自身として」という注釈がついているものの、ジャニーズ性加害問題について、「検証や改革が足りないと自覚」していると述べている。矛先はジャニーズ事務所だけではない。テレビや自局であるTBSまで含むニュアンスが、「自覚」という言葉に込められていると筆者は感じた。

 筆者はテレビ各局・各番組でのジャニーズ性加害問題に対する報道姿勢をウォッチしてきた。その中で、安住アナおよび彼が司会を務める番組は当初この問題を扱うことに及び腰だったことは間違いない。そうした「マスメディアの沈黙」、消極的な姿勢の大きな背景には「大手芸能事務所に対する忖度があった」という旨を、安住アナ自身が9月9日の「情報7daysニュースキャスター」で述べている。以来、彼が司会する番組ではジャニーズ性加害問題について、小さな動きも積極的に報道するように変化を見せている。